【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
「貴公の長年の働きを考慮して今回だけは不問にする。だが次に妻や――娘への侮辱を口にすれば容赦はしない」
「……はっ」

 頭を下げたまま公爵が返事をした。
 ギルフォードはまだ戸惑うエメリアの背中に手を置いて、その場を後にした。



 俯きがちだったエメリアが口を開いたのは、角をいくつか曲がったところでだった。

「……いつから、話を聞いていたのですか」
「途中から」

 『たかが妖精の愛し子を』辺りだが、続く言葉が言葉だけにそれを今言うのは無粋すぎる。同時に、皇太子への侮辱―に他ならない言葉を繰り返すつもりもない。

 エメリアが大きく息を吐いた。

「ありがとうございました。私が何を言っても父は考えを変えないでしょうし」
「だから、わざと打たれるつもりだったのか」
「あら、見抜かれていましたか」

 いつものような軽い言葉に、ギルフォードも口の端を持ち上げた。

「いえ、それよりも陛下の傷を冷やさないと……」
「これくらい気にしなくていい」

 杖の素材は硬いものだが、打つ力はたかがしれている。
 だが何度も叩かれれば骨が折れてもおかしくない。それが、か弱い女子どもなら尚更だ。

 (『教育し直してやる』、か)
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