【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
(行っちゃった)

 少し残念だが、あの子のおかげでうまく話が逸れてエメリアは心の中で息を吐いた。

 ギルフォードが何かを謝ろうとしているのはわかった。
 だから止めたのだ。いや可愛い黒い埃に気を取られたのはもちろんなのだが。
 
 赦しを乞うギルフォードの姿など、想像すらしていなかった。

 冷徹で優秀でなんでもできてしまう彼も、同じ人間なのだと最近実感している。
 けれど申し訳ないが、彼に謝られるつもりはない。身重で逃げたことも、謝る気は無かった。

 ギルフォードに心からの謝罪をされれば、エメリアは許してしまうかもしれないから。

(それだけはダメ)

 許さなくていい。エメリアがギルフォードの隣にいるのは、あくまでもフレンの為であるべきだ。
 もし、ときおり寂しそうな顔を見せる彼に心を寄せてしまったら――。

『どうして言うことを聞かないの!』

 ギルフォードの気を引こうとフレンを叩く自分の図が、やけにリアルに脳裏をよぎる。

 先ほどの父と同じ表情で。
 父と同じことを。
 
 (――それだけは、絶対に)

「仕立て屋の服はどうだった」

 問いかけられてはっと我に返る。
 仕立て屋の手配と服に礼を言って、エメリアは言葉を続けた。

「ですが、三人お揃いはちょっと……」
「!」

 ギルフォードが驚いた表情でこちらを見る。
 やはり奇抜な発想と思っていなかったらしい。彼もきっと、家族というものがわかっていないのだろう。

(先が思いやられるわ)

 ひとまず妙な角度から心をざわつかせるのは、本当にやめてほしいものである。
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