【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
 すっと、メレディスがいつのまにか最前列にいたエメリアを手で示した。

「こちらへどうぞ」

 微笑んだ彼女に空いた椅子を勧められる。
 エメリアだと気づいているのだろうか。警戒しながら座ると、メレディスはその紅い目をゆっくりと妖艶に細めた。

「なにを占いましょうか」
「……そうね。未来について、とかお願いできますか」

 エメリアにうなずいた彼女が、黒い水晶に手をかざす。よく見れば黒一色ではなく中に靄がかかっているようだ。

「――……」

 しばらくして、動きを止めた彼女の目が真っ直ぐにエメリアを捉えた。

「お可哀そうに、あなたの余命は二年ありません」

 周囲がざわめく。
 その言葉を聞いて、エメリアは頬に手を置いた。

「そうですか」
「あら。驚かれないのですか?」
「少し予想していまして」

 それはちょうど、原作でのエメリアの命の期限だ。

(まぁでも、むざむざ死ぬつもりはないけど)

 側妃やもろもろ、もちろん用意は大事だが、フレンの成長を見るために死んではいられない。

「ありがとう、教えてくれて助かります」

 むしろそれなら用心もできる。
 側妃やもろもろ、もちろん用意は大事だが、可愛い娘の成長を見るために死んではいられない。そのために。

 エメリアはメレディスの手を掴んだ。「ああ」とメレディスが戸惑った声をあげたが気にする余裕はない。
 エメリアはにっこり微笑んだ。

「メレディスさん、ちょーっと、お話しする時間はありますか? 私がどこでどういうふうに死ぬのかとか含めて、今後についてもろもろ話したいことがあるんですけ、ど」

 そこでふと気づいた。先ほどまであれだけいたはずの客がいなくなっている。
 それどころか、街に人の気配がない。

「――これは……」

 思わず立ち上がったところで、強い力で逆に手を取られた。

「エメリア様!」
「えっ」

 口元にヴェールをつけたメレディスは青ざめた表情でエメリアを見上げた。

「わたくし、絶対に阻止してみせます!」
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