【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
「え、ええええ!?」

 突然のことにパニックになる。しかし振りほどこうにも掴むメレディスの力が強い。

「は、離し……」
「はぁぁあ、夢にまで見たエメリアの体温……」

(この話のラスボス、継母メレディスよね!?)

 あまりにも原作とかけ離れた言動に狼狽える。
 同時に彼女の予言と『わたくし、絶対に阻止してみせます!』の言葉が蘇った。

 未だ、街にはエメリアたち以外の人間の姿はない。

 そういえば、妖精はその空間だけ切り取って、『あちらの世界』に持っていくことができるはずだ。

「ええと、メレディス、さん? ……悪い妖精の」
「はい」

 エメリアの手を掴んでいるメレディスが、あっさりと認めて顔を上げる。
 そこでふわりと、視界の端に黒いものが飛ぶのが見えた。

「あ」

 いつか宮殿で見た埃妖精だ。その子はエメリアの前をふよふよと風に吹かれて漂っている。

「この妖精……もしかしてあなたが、父の杖を逸らして助けてくれたの?」
「助けただなんてそんな」

 埃妖精を指先に乗せて、妖艶にメレディスが笑う。

「エメリアに手を上げるだなんてそんなことをする不届もの、本当であれば塵にしてもよかったのですが悪い妖精避けの呪いのせいで力及ばず、使い魔であるこの子をぶつけるしかなかったので、この場合は助けたと言っていいのか……」
「助けてくれたのね」

 ようやく落ち着いてきた。
 埃妖精と同じく、メレディスに害意は感じない。それどころか……。

「やっぱり本物のエメリアは数千倍かわいい……」

 妙な好意を感じる。突き刺さるような視線に耐えながら、問いかけた。
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