【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
 これはむしろよくない。
 ギルフォードに恋心を抱いていた、物語の『エメリア』もこんな気持ちだったのだろうか。

 だとするとやはり、早めに彼のそばを離れた方がいいだろう。

 エメリアのお腹をこわごわ優しくさすっている夫を見る。
 もうこんな間近で見ることもないのは、少し寂しい気もした。



 そして臨月に離縁状を部屋に置いて、無事にエメリアは王宮を抜け出し、辺境の村に身を隠した。







「陛下が、妃殿下を探して国中大騒ぎですが……」
「体面上探しているだけです。離縁状は置いていますし、すぐにおさまりますよ」

 事実を伝えれば、こころよくエメリアと娘を受け入れてくれた村の皆が、困ったように眉尻を下げる。

 探しているギルフォードには申し訳ないが、これはヒロインのためなのだ。引くわけにはいかない。

「――わかりました」

 村長が立ち上がった。それに呼応するように村の皆も立ち上がる。

「水害の際にもいろいろ世話になりました我々がエメリア様とお子を必ずお守りいたします」
「そうだ、恩返しをせねば……!!」

「いえあの、あくまで村の一員としていただければありがたいですのですが……」

 うぉぉお、と村の集会場で雄叫びをあげる皆に、エメリアは赤子を抱きながら恐縮した。





 そうして三年の月日が流れた。

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