【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
表情が動かないから、むしろ少しの差がわかりやすいのかもしれない。

「それは信用がないですね」
「一度逃げてそれを言うのか」
「確かに」

 同意したエメリアは、ギルフォードにそっと手を伸ばした。

「これからも多分出掛けはしますけど、陛下に言わずにもう勝手にどこかに消えたりはしませんから」

 背の高い彼を前に伸び上がり、よしよしと頭を撫でる。

「……」
「あ」

 思わずフレンにするようにしてしまった。
 びっくりした顔のギルフォードからパッと手を離す。

「み、皆にも、街の人たちにも心配させてしまいましたし、反省はしてますよ」

 取り繕うように笑って両手を合わせると、そこでギルフォードが一歩近づいた。

 一般男性の中でも体格のいいギルフォードは目の前に立つとまるで壁だ。
 なんとなくじりじりと後退して、エメリアはバルコニーの陰に追い詰められた。

「な、なんですか……、っ」

 顎を持ち上げられた。
 端正な彼の顔が近づいてきてーーエメリアは、ギルフォードの唇に両手を置いた。

「……」
「……」
「……」
「ちょ、近い、ちかいです!」

 全力で押し返しているのに、さらに壁際に追い込まれる。
 強い力に対抗してしばらく。ギルフォードはふいに身を引いた。

「……はぁ」

 ギルフォードがこれみよがしにため息をつく。
 そうしたいのはこちらのほうだ。
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