【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
(び、びびびっくりした)
バルコニーが暗くてよかった。手を置くと熱い頬をエメリアは必死に冷ます。
確かに夫婦だし、初夜では『そういうこと』もした。
だがそれは義務というか必要なことだけだったので、……そういえばキスもしなかったことを思い出す。
しばらくしてギルフォードがぽつりと言葉を落とした。
「勝手にどこかに行かないというのは信用する」
「ありがとうございます」
「だが、今回誰にも言わずに出掛けたのは悪手だったというのは、わかるな」
「ええ、まぁ……」
あんなに大騒ぎしなければバレなかったのではないかとも思ったが、フレンも一緒だったから仕方がない。
「皇帝一家に何があったのかと民が不安に思う」
「ええ、まぁ」
あんなに大騒ぎしなければ以下略。
「えっと、つまり……?」
どうにも煮え切らないギルフォードが何を言いたいのかわからず首を傾げる。
彼が咳払いをした。
「そこで、提案なのだが……」
◇
次の日。
街は昨日の検問騒ぎがまだ尾を引いていた。
「昨日のはなんだったんだろう」
「皇妃殿下がまた逃げ出したって話だよ。無事に見つかったらしいけど」
「大人しそうに見えて、皇妃様も大胆だ」
為政者がそんなことで大丈夫なのか、そう話をする広場の人々の前に一台の馬車が止まった。
周りを騎士で固めた、見るからに豪華な四頭立ての馬車だ。
扉が開いて、そこから、誰もが見惚れるような銀髪の美丈夫が現れる。
言われなくてもわかる。この国の皇帝だ。
思わぬ人物の登場に、人々が足を止めて礼を執る中、彼が馬車内に向けて手を伸ばした。
その手のひらに、白く華奢な手が置かれる。
皇帝にエスコートされて現れたのは、美しい金の髪のお妃さまだ。
続いて、妖精を連れた銀髪の愛らしい女の子も。
皇妃と皇太子、そして皇帝は一目でお揃いとわかる服を着ていた。