【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
 馬車から先に降りたギルフォードにエスコートされて、エメリアは再び街に降り立った。

 身につけているのは、出発前に作った家族三人揃いの外出用ドレスだ。
 一目でそれとわかるデザインと色味に、観衆からはざわめきの後、あたたかな視線を向けられた。

「おやまぁ、仲良しだわ」
「お揃いなんだねぇ」

 これが昨日、ギルフォードがエメリアに出した提案である。

 そもそもこの日は三人で街の視察をする予定にしていた。そこで、この家族揃いの服を着ようと。

(着る気は、なかったのに……!)

 ギルフォードは澄ました顔で。エメリアは巻き込まれたフレンとともに若干顔を引き攣らせて、皆が振ってくれる手に笑顔を返した。



 とはいえ、視察が始まればすぐにそちらに集中することになった。

 街の主要施設や教会、学校や孤児院を訪問して、一行は最後に市場にやってきた。

 それまできりっとした顔であちこちを巡っていたフレンが、このときばかりは顔を輝かせる。

「おかあさま、なつかしいです」
「ええ」

 村に逃げていたときは、近くの市場にたまに出掛けることがあった。そこと雰囲気が似ている。

 刺繍や糸紡ぎで現金収入があったときに必要なものを買っていたのだ。それを思い出すとやはりよぎるのは、懐かしい人たちの顔。

(やっぱり、村長さんたちに一目だけでも会いたいな)

 今回旅程に入っていないのは、あまり特定の場所を皇帝が贔屓していると思われないためだが……。

 穏やかな日々を思い出していると、フレンがエメリアの服を引いた。
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