【短編集】あなたのためを思って言っているのよ?
「大嫌いな能力を、僕のために使ってくれたんだね」


 ミゲルがそう言って優しく微笑む。彼はそっと目を細めると、手のひらに力を込めた。


「アンジュ、君はとても優しい人だよ。ありがとう、僕を助けてくれて。本当にありがとう」

「ミゲル様……」


 これまでアンジュは、助けた人から直接お礼を言われたことがない。治癒をしているのはオーガストということになっていたからだ。それが当たり前だったし、残念だと思ったことなんて一度もなかった。けれど、実際にお礼を言われると、何とも言えない複雑な気持ちになってしまう。


「――決めた。アンジュが自分で自分を大事にできないなら、僕が君を大事にするよ」

「え? だけど……」


 思わぬ申し出に、アンジュが目を丸くする。


「断っても無駄だよ。僕、一度決めたら結構頑固なんだ」


 顔に似合わぬ言葉を口にし、ミゲルがニカッと歯を見せる。嫌なのに、嬉しくないのに――アンジュは思わず笑ってしまった。


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