桃色のアリス ~暗黒の魔女とアリスの想い~
「これはこれはー、知っているとは意外でしたー。僕のこと、知っていましたねぇ?」
「この王である俺様の目は節穴ではな「結構節穴ですが、王子の目」な、なにを根拠にっ」
時計屋さんが口をはさむと、ダイヤの王子は一瞬だけ威厳を捨てた。
虚偽申告、だなんて。いったいどんな嘘をダイヤの王子についたのだろう。
「けどさー」
「ウサギの呪いって」
「二人は」
「決して交わらない」
「そんな呪いだよね」
ディーとダムが交互に話す。
最初に帽子屋が言っていた。白ウサギと黒ウサギ、二人は決して交わらない。会うことは出来ない。
「だから女王から権限をもらうのだ」
ダイヤの王子は、頑なに何かを隠している。女王様から権限をもらう、としか言わない。
「王様は何を隠しているんだい?」
「王は嘘をつきません」
チェシャ猫と時計屋さんが睨みあう。ダイヤの王子を疑う者を氷漬けにされてしまいそうな時計屋さんの視線に、空気が凍るようだった。
「チェシャ猫。信じましょう。王には王の呪いがあるのでしょう」
「でも、その権限とやらに魔女の視線を逸らすことができるなら、女王はなぜこの数千年、一度も力を振るわなかったんだい? そうしたら呪いは」
そこまで言って、チェシャ猫ははっとして私を見る。
「理由があるんだよ。鏡を隠す理由が、権限を使わない、もしかしたら使えない理由が。私はそう信じたい」
「そうだったね。君が信じるなら、僕も信じよう。話を遮ってごめんよ、ダイヤの王子」
「かまわん。十分に説明しない俺様に非がある。愛する女のためにしか在れない俺様を許せとは言わん」
それ以上、ダイヤの王子は何も言わなかった。
真実はきっと、私が想像できないくらい複雑で。誰もが何かに縛られている。呪いに、想いに。
「協力してくれてありがとうございます、ダイヤの王子」
ダイヤの王子は切なそうに微笑んだ。何がこの人をこんな風に切なくさせるのだろう。
ふっと、黒ウサギの顔が浮かぶ。黒ウサギもまた、切ない想いを抱えていた。
早く、早くこの呪いを解きたい。
今はもう、私は一人じゃない。ダイヤの城の皆も協力してくれている。
ここにも貴方を消さないように動いてくれる人がいる。待っていて、黒ウサギ。
「女王と和解出来たあと、アリス姫は黒ウサギの元へ行って呪いを解いてください。援護は致します」
時計屋さんがハンプティに視線を向けると、ハンプティが頷く。
「分かりました。でも待って。黒ウサギは今どこに?」
肝心の黒ウサギが行方不明では、向かう先が分からない。黒ウサギとは女王様との一件で別れたきりだ。黒ウサギは穴に巻き込まれて別々になってしまったし、今どこにいるか分からない。
「それは僕らが」
「調べてきたよ」
ディーとダムが小さな机を引いてきたかと思うと、上に乗っていた布が外される。一連の行動はまるでショーみたいだ。
「黒ウサギの」
「居場所はここ」
トン、と二人の指が置かれる。地図上には、その街の特色を表しているのか、市場や帽子、服の絵が描かれている。中でも大きく描かれているのは、コップの絵。
「市場、帽子、服、って。もしかして」
「そう、人賑やかな」
「別名『お茶会の街』」
「帽子屋の館がある街だ」
帽子屋の館に遠からず、同じ街に白ウサギの館もある。迷いの森を脱出して辿り着いた街。白ウサギが私の願いを気付かせてくれた、旅の始まりとも言える場所に、黒ウサギがいる。
「街は現状、世界の崩壊が始まり半壊している。気をつけるのだぞ」
「はい」
「この王である俺様の目は節穴ではな「結構節穴ですが、王子の目」な、なにを根拠にっ」
時計屋さんが口をはさむと、ダイヤの王子は一瞬だけ威厳を捨てた。
虚偽申告、だなんて。いったいどんな嘘をダイヤの王子についたのだろう。
「けどさー」
「ウサギの呪いって」
「二人は」
「決して交わらない」
「そんな呪いだよね」
ディーとダムが交互に話す。
最初に帽子屋が言っていた。白ウサギと黒ウサギ、二人は決して交わらない。会うことは出来ない。
「だから女王から権限をもらうのだ」
ダイヤの王子は、頑なに何かを隠している。女王様から権限をもらう、としか言わない。
「王様は何を隠しているんだい?」
「王は嘘をつきません」
チェシャ猫と時計屋さんが睨みあう。ダイヤの王子を疑う者を氷漬けにされてしまいそうな時計屋さんの視線に、空気が凍るようだった。
「チェシャ猫。信じましょう。王には王の呪いがあるのでしょう」
「でも、その権限とやらに魔女の視線を逸らすことができるなら、女王はなぜこの数千年、一度も力を振るわなかったんだい? そうしたら呪いは」
そこまで言って、チェシャ猫ははっとして私を見る。
「理由があるんだよ。鏡を隠す理由が、権限を使わない、もしかしたら使えない理由が。私はそう信じたい」
「そうだったね。君が信じるなら、僕も信じよう。話を遮ってごめんよ、ダイヤの王子」
「かまわん。十分に説明しない俺様に非がある。愛する女のためにしか在れない俺様を許せとは言わん」
それ以上、ダイヤの王子は何も言わなかった。
真実はきっと、私が想像できないくらい複雑で。誰もが何かに縛られている。呪いに、想いに。
「協力してくれてありがとうございます、ダイヤの王子」
ダイヤの王子は切なそうに微笑んだ。何がこの人をこんな風に切なくさせるのだろう。
ふっと、黒ウサギの顔が浮かぶ。黒ウサギもまた、切ない想いを抱えていた。
早く、早くこの呪いを解きたい。
今はもう、私は一人じゃない。ダイヤの城の皆も協力してくれている。
ここにも貴方を消さないように動いてくれる人がいる。待っていて、黒ウサギ。
「女王と和解出来たあと、アリス姫は黒ウサギの元へ行って呪いを解いてください。援護は致します」
時計屋さんがハンプティに視線を向けると、ハンプティが頷く。
「分かりました。でも待って。黒ウサギは今どこに?」
肝心の黒ウサギが行方不明では、向かう先が分からない。黒ウサギとは女王様との一件で別れたきりだ。黒ウサギは穴に巻き込まれて別々になってしまったし、今どこにいるか分からない。
「それは僕らが」
「調べてきたよ」
ディーとダムが小さな机を引いてきたかと思うと、上に乗っていた布が外される。一連の行動はまるでショーみたいだ。
「黒ウサギの」
「居場所はここ」
トン、と二人の指が置かれる。地図上には、その街の特色を表しているのか、市場や帽子、服の絵が描かれている。中でも大きく描かれているのは、コップの絵。
「市場、帽子、服、って。もしかして」
「そう、人賑やかな」
「別名『お茶会の街』」
「帽子屋の館がある街だ」
帽子屋の館に遠からず、同じ街に白ウサギの館もある。迷いの森を脱出して辿り着いた街。白ウサギが私の願いを気付かせてくれた、旅の始まりとも言える場所に、黒ウサギがいる。
「街は現状、世界の崩壊が始まり半壊している。気をつけるのだぞ」
「はい」