桃色のアリス ~暗黒の魔女とアリスの想い~
瞳を輝かせて、駆け寄ってきてくれたハンプティの後ろから、ディーとダムの二人が姿を現す。相変わらずそっくりで危険なことを言う二人に、思わず警戒してしまうのはチェシャ猫も同じなようで。
「その二人はアリスに近付かないでくれるかい。ダイヤの森でのこと、僕はまだ忘れていないよ」
「あらら、これは怖い猫」
「ふふ、恐ろしい猫」
「大丈夫、二人は何もしないよ。それにしてもアリス、君が無事に帰って来てくれて良かった」
童話の王子様のように、片膝をついたハンプティがこちらを見上げて、私の手を取る。
「君なら探し物を掴むことが出きると思っていた。さすがこの僕が一目置いた女の子だ」
にこりと笑うハンプティに柔らかな雰囲気はなく。呪いによって起こされた裏の顔そのもので。
「ハンプティ、あの」
「もう一度問うよ。君は、優しい僕と裏の顔の僕、どちらの手を取る?」
私の手を、するりと離す。少し意地悪な質問と思いながらも、私は離れた手を取った。
「私は私のままだよ、ハンプティ。どっちもハンプティでしょ?」
「そんな君だから、国と女王を救えたんだね。それから、ダイナのことも」
「ダイナは、どうしているの?」
チェシャ猫と再開を果たした私を案内してくれた後、ダイナは公爵夫人の館へと走り去っていった。それから姿を見ていない。
「最初の主人のところに帰ったよ。アリスと共にこの国を見つめている」
ふ、とハンプティの手から記憶が流れてくる。
太陽光に煌めく糸のような金髪が、視界に飛び込む。これは、ダイナの視界。少女に抱かれているのか、少女の横顔と不思議の国の景色が映る。この城から遠く離れた丘から、不思議の国を一望している。
少女は、そっと微笑んでいた。
外見の与える印象とは裏腹に、大人しそうでいて天真爛漫、知的なようでいて無知。齢はそう私と変わらなそうな外見でいて、中身は成熟しているよう。表裏一体を具現化したような、まるでこの世の人でないような。
どうして私がそう感じたのか、本当は彼女が誰だったのか、やっと繋がった。
煌めく金髪と、パープルの瞳。表裏一体の彼女は。魔女リティアは。
一代目のアリス。命と引き換えに最後の奇跡を掴み、ダイナと共に奇跡を与えてくれた最初のアリス。
「ハンプティ、きっと二人も幸せになれるよね」
「勿論。君がそう願うなら」
二人で微笑み合う。
「仲間外れにしないでくれるかい。あと、ハンプティ様、アリスの手を離してくれるかい?」
「あぁ、いつまでも女の子の手を取るのは失礼だったね!」
「嫉妬だ」
「嫉妬だね」
「そこの双子、煩いよ」
ハンプティから引き剥がされ、チェシャ猫に後ろから抱き締められる。
「ちょっとチェシャ猫!」
「なんだい?」
ハンプティやディーダムだけでなく、時計屋さんや王様がいるのに、恥ずかしい。王様は女王を抱き締められないと言うのに、と呟きながら黒いオーラを発しているし、この場から離れた方がいい気がしてきた。
「そうだ、白ウサギと黒ウサギの二人がアリスを探していたよ」
「本当? ありがとう、ハンプティ。行こ、チェシャ猫! では王様、頑張ってください! 女王様は王様のこと、好きだと思うので、その、失礼します!」
思い切り頭を下げてから、チェシャ猫の手を引いて走る。丸投げしたね、とチェシャ猫に囁かれて、二人で笑った。ちらりと振り向くと、王様は元気が出たのか女王様の部屋と向き合い始めていた。
「白ウサギと黒ウサギ、どこにいるんだろうね。ウサギの穴が出てくれればいいんだけど」
「うん、それならすぐそこにあるよ」
「えっ!」
「その二人はアリスに近付かないでくれるかい。ダイヤの森でのこと、僕はまだ忘れていないよ」
「あらら、これは怖い猫」
「ふふ、恐ろしい猫」
「大丈夫、二人は何もしないよ。それにしてもアリス、君が無事に帰って来てくれて良かった」
童話の王子様のように、片膝をついたハンプティがこちらを見上げて、私の手を取る。
「君なら探し物を掴むことが出きると思っていた。さすがこの僕が一目置いた女の子だ」
にこりと笑うハンプティに柔らかな雰囲気はなく。呪いによって起こされた裏の顔そのもので。
「ハンプティ、あの」
「もう一度問うよ。君は、優しい僕と裏の顔の僕、どちらの手を取る?」
私の手を、するりと離す。少し意地悪な質問と思いながらも、私は離れた手を取った。
「私は私のままだよ、ハンプティ。どっちもハンプティでしょ?」
「そんな君だから、国と女王を救えたんだね。それから、ダイナのことも」
「ダイナは、どうしているの?」
チェシャ猫と再開を果たした私を案内してくれた後、ダイナは公爵夫人の館へと走り去っていった。それから姿を見ていない。
「最初の主人のところに帰ったよ。アリスと共にこの国を見つめている」
ふ、とハンプティの手から記憶が流れてくる。
太陽光に煌めく糸のような金髪が、視界に飛び込む。これは、ダイナの視界。少女に抱かれているのか、少女の横顔と不思議の国の景色が映る。この城から遠く離れた丘から、不思議の国を一望している。
少女は、そっと微笑んでいた。
外見の与える印象とは裏腹に、大人しそうでいて天真爛漫、知的なようでいて無知。齢はそう私と変わらなそうな外見でいて、中身は成熟しているよう。表裏一体を具現化したような、まるでこの世の人でないような。
どうして私がそう感じたのか、本当は彼女が誰だったのか、やっと繋がった。
煌めく金髪と、パープルの瞳。表裏一体の彼女は。魔女リティアは。
一代目のアリス。命と引き換えに最後の奇跡を掴み、ダイナと共に奇跡を与えてくれた最初のアリス。
「ハンプティ、きっと二人も幸せになれるよね」
「勿論。君がそう願うなら」
二人で微笑み合う。
「仲間外れにしないでくれるかい。あと、ハンプティ様、アリスの手を離してくれるかい?」
「あぁ、いつまでも女の子の手を取るのは失礼だったね!」
「嫉妬だ」
「嫉妬だね」
「そこの双子、煩いよ」
ハンプティから引き剥がされ、チェシャ猫に後ろから抱き締められる。
「ちょっとチェシャ猫!」
「なんだい?」
ハンプティやディーダムだけでなく、時計屋さんや王様がいるのに、恥ずかしい。王様は女王を抱き締められないと言うのに、と呟きながら黒いオーラを発しているし、この場から離れた方がいい気がしてきた。
「そうだ、白ウサギと黒ウサギの二人がアリスを探していたよ」
「本当? ありがとう、ハンプティ。行こ、チェシャ猫! では王様、頑張ってください! 女王様は王様のこと、好きだと思うので、その、失礼します!」
思い切り頭を下げてから、チェシャ猫の手を引いて走る。丸投げしたね、とチェシャ猫に囁かれて、二人で笑った。ちらりと振り向くと、王様は元気が出たのか女王様の部屋と向き合い始めていた。
「白ウサギと黒ウサギ、どこにいるんだろうね。ウサギの穴が出てくれればいいんだけど」
「うん、それならすぐそこにあるよ」
「えっ!」