桃色のアリス ~暗黒の魔女とアリスの想い~
「まず理を話そうか。暗黒の魔女にとって、不思議の国にかけた呪いは遊びに過ぎない。アリスに愛されたウサギが残り、愛されなかったウサギは消える。二人を共に選ぶことは出来ないから、アリスはどちらをも選ぶ事は出来ない。誰もが運命から逃れられない。暗黒の魔女はどこか別の世界で封印されているらしいと聞く。仮定として魔女を倒そうにも、手の打ちようがないし、暗黒の魔女は最も邪悪な、危険な魔女だ」
女王様から預かったアリスさんの懐中時計を握り締める。
絶望的な真実。呪いを解く事も、出来ないなんて……
「理不尽、だが。俺はウサギが助かる方法を諦めたくないと思っている。だから全面的に協力はできないが、知っていることなら話そう」
「そういうことなら聞くよ。帽子屋、最近ここにウサギが来なかった?」
「あぁ来たよ。最近来たのは黒ウサギだな。黒いシルクハットを買っていった」
「ウサギも館にくるの?」
「あぁ、お茶を飲んでいったり、泊まっていったり、色々だな」
帽子屋がチェシャ猫を見た。
「お前みたいに」
「……」
チェシャ猫が帽子屋から顔を背ける。
「チェシャ猫ってどこに住んでいるの?」
「いろんな所」
「それって、いろんな所に家があるってこと?」
「そんなとこだよ」
何か分かったようで分からなかったような。霧の中で姿形は見えているのに、実体に触れれば煙のように消えてしまいそうな、砂漠でやっと見えた泉が蜃気楼だった時のような、実体の掴めない答えだ。
「アリス、紅茶のお代わりはいかがかな?」
帽子屋がポットを持ち上げる。
「今はお代わり出来ないけれど、紅茶、とても美味しい。また淹れてね」
「アリスに誉めて貰えるなんて感激だな。この日の為に紅茶を淹れる練習をしておいて良かったよ」
帽子屋が微笑んだ。青い髪が揺れる。
「今日はもう遅いから、ここに泊まろう。帽子屋、いいよね?」
「部屋なら余っている。好きな部屋に泊まってもらって構わない」
「じゃあ、今日は疲れただろうから、早めに部屋で休もうか」
チェシャ猫が少し強引な気がしながらも、言われてみれば疲れが出てきて考えてはいられなかった。城から出てまだそんなに経ってないはずなのに。穴から落ちたり、崖から落ちたり、慣れない森の中を走ったからだろうか。体がやけに重い。
「うん。ありがとう帽子屋、お言葉に甘えて部屋を借りるね」
部屋を出て館の廊下を歩いた。チェシャ猫はまだ帽子屋と話があるようで、一緒には来なかった。窓の外はだいぶ暗くなっている。
「今日は色々あったな」
一日しか経っていないのに、ずいぶん長い一日だった。
黒ウサギの時計、私は止める事が出来なかった。チャンスはあったハズなのに。
「ダメだな、私」
黒ウサギの微笑んだ顔が頭に浮かぶ。そして、あの必死な顔も。
『アリスは白ウサギを選べばいいんだ!』
あの言葉が、いまだに耳から離れない。
屋敷の階段を上がり、帽子屋に言われた事を思い出す。
「二階の部屋だったらどこでもいい、んだよね」
屋敷は広いので二階にも部屋は沢山あった。
好きな部屋って言われてもなぁ。逆に迷っちゃうよ。
とりあえず廊下の真ん中辺りにきたので近くにある部屋のドアを開ける。中は薄暗いけれど、廊下の電気が部屋の中へ入って少しだけ明るくなる。奥にベッドが置いてあるのが把握できた。
もう寝るんだし、電気はつけなくてもいいよね?
女王様から預かったアリスさんの懐中時計を握り締める。
絶望的な真実。呪いを解く事も、出来ないなんて……
「理不尽、だが。俺はウサギが助かる方法を諦めたくないと思っている。だから全面的に協力はできないが、知っていることなら話そう」
「そういうことなら聞くよ。帽子屋、最近ここにウサギが来なかった?」
「あぁ来たよ。最近来たのは黒ウサギだな。黒いシルクハットを買っていった」
「ウサギも館にくるの?」
「あぁ、お茶を飲んでいったり、泊まっていったり、色々だな」
帽子屋がチェシャ猫を見た。
「お前みたいに」
「……」
チェシャ猫が帽子屋から顔を背ける。
「チェシャ猫ってどこに住んでいるの?」
「いろんな所」
「それって、いろんな所に家があるってこと?」
「そんなとこだよ」
何か分かったようで分からなかったような。霧の中で姿形は見えているのに、実体に触れれば煙のように消えてしまいそうな、砂漠でやっと見えた泉が蜃気楼だった時のような、実体の掴めない答えだ。
「アリス、紅茶のお代わりはいかがかな?」
帽子屋がポットを持ち上げる。
「今はお代わり出来ないけれど、紅茶、とても美味しい。また淹れてね」
「アリスに誉めて貰えるなんて感激だな。この日の為に紅茶を淹れる練習をしておいて良かったよ」
帽子屋が微笑んだ。青い髪が揺れる。
「今日はもう遅いから、ここに泊まろう。帽子屋、いいよね?」
「部屋なら余っている。好きな部屋に泊まってもらって構わない」
「じゃあ、今日は疲れただろうから、早めに部屋で休もうか」
チェシャ猫が少し強引な気がしながらも、言われてみれば疲れが出てきて考えてはいられなかった。城から出てまだそんなに経ってないはずなのに。穴から落ちたり、崖から落ちたり、慣れない森の中を走ったからだろうか。体がやけに重い。
「うん。ありがとう帽子屋、お言葉に甘えて部屋を借りるね」
部屋を出て館の廊下を歩いた。チェシャ猫はまだ帽子屋と話があるようで、一緒には来なかった。窓の外はだいぶ暗くなっている。
「今日は色々あったな」
一日しか経っていないのに、ずいぶん長い一日だった。
黒ウサギの時計、私は止める事が出来なかった。チャンスはあったハズなのに。
「ダメだな、私」
黒ウサギの微笑んだ顔が頭に浮かぶ。そして、あの必死な顔も。
『アリスは白ウサギを選べばいいんだ!』
あの言葉が、いまだに耳から離れない。
屋敷の階段を上がり、帽子屋に言われた事を思い出す。
「二階の部屋だったらどこでもいい、んだよね」
屋敷は広いので二階にも部屋は沢山あった。
好きな部屋って言われてもなぁ。逆に迷っちゃうよ。
とりあえず廊下の真ん中辺りにきたので近くにある部屋のドアを開ける。中は薄暗いけれど、廊下の電気が部屋の中へ入って少しだけ明るくなる。奥にベッドが置いてあるのが把握できた。
もう寝るんだし、電気はつけなくてもいいよね?