桃色のアリス ~暗黒の魔女とアリスの想い~
大切な懐中時計を首にかけて、ベッドの毛布を少しはぐり、中へ入った。普段ならネグリジェに着替えるけど、体はもうクタクタだ。ほんのり人肌の暖かさを感じて、ほっと肩の力を抜く。
「ん」
「ひやぁっ! なななな、何?」
突如ベッドの中から発せられた人の声に、飛び退くと、羽毛が沢山詰まった真っ白な毛布が、ふわふわと動く。
「んー、誰だ……?」
暗くてよく分からないけど、男の人の声がして、体をまき取られてしまった。私は悲鳴を飲み込み、この状況を打破しようともがく。
「まさか、帽子屋、じゃねぇよな」
「ああああのっ! ご、ごめんなさいっ! 私、部屋を間違えて」
覚醒した頭で考えてみれば、誰もいない布団が温かいなんておかしい。飛び出そうにも抱き締められる力が強まって、どうすることもできないし、狼狽せずにはいられない。
「あの、離してくださーい!」
「……」
「寝ちゃったの? 起きて!」
「アリス?」
「へ?」
腕の力が少し弱まって、優しく包まれるような感じがした。
「懐かしいつーのも、可笑しいな。むしろ、なんつーか……あー、お前本当にアリスか?」
「えっと、アリスです」
とりあえず名乗っておかなくては。ずっとこのままな気がする。
「ククッ、やっぱりな。十四代目のアリス、か。大胆だな。オレは眠りネズミ。よろしくな。アリス」
「だ、抱き締められながら言われても困るよ! けど、よ、よろしくね」
やっとの事で解放され、逃げるようにベッドを降りて部屋の電気をつけた。
「ふぁぁぁあ。眩しーぜ」
ベッドで欠伸をした青年はふわふわしたクリーム色の髪をかくと、私に視線を向けた。
「ククッ。予想通り、ってとこか。会いたかったぜ。桃色のアリス。俺は夢の中で何度もアリスに会ってきたんだぜ、なんてな」
ベッドから手を伸ばした眠りネズミが私の髪に触れた。髪を掬われ、眠りネズミにキスをおとされる。冗談まじりに言われたことよりも、からかわれた方が恥ずかしくて、言葉をかえせない。きっと顔はゆでダコだ。
「ククッ、いじりがいがある。ここに住めよ。俺が可愛がってやるぜ」
「いじりがい? 住めって、そ、それは」
どうしよう。凄く期待した目でこっち見ている。断ったら、後が怖そう。
「それは、なんだ? 不満か?」
心の中で助けを求める。有無を言わせない威圧感に負けてしまいそうだ。
「アリス! 眠りネズミの部屋が開いているから、まさかとは思ったけど」
部屋に入ってきたチェシャ猫の姿に、ほっと息をつく。助かった。
「アリスを離してよ。ドブネズミ」
「チッ」
「大丈夫?」
「うん」
「よぉ。久しぶりじゃねーか、チェシャ猫」
チェシャ猫は怒った表情で眠りネズミを睨む。黙って睨むチェシャ猫と、余裕そうだけど喧嘩を売っている眠りネズミ。もしかしなくても仲が悪いのか、流れている空気が重い。
「こんな猫じゃなくて俺にしろよ、俺がアリスを守ってやるぜ」
眠りネズミの手が伸びる。その瞬間、ぐいっと後ろに肩を引き寄せられた。
「悪いけど、アリスは僕が守るから。君には渡せないよ。行こう。疲れているだろう?」
「今日のとこはひいてやるか。また来いよ」
「う、うん。おやすみなさい。眠りネズミ」
チェシャ猫に肩を抱かれ、部屋を出る。眠りネズミの部屋のドアを閉め、チェシャ猫に手を引かれて廊下を歩いた。チェシャ猫が近くにあった部屋のドアノブに手をかけると、ドアが音を立てて開いた。部屋の中に入り、電気をつける。
「僕は隣の部屋で寝るよ。何かあったら呼んでね」
「うん。あの、チェシャ猫」
「なんだい?」
「ん」
「ひやぁっ! なななな、何?」
突如ベッドの中から発せられた人の声に、飛び退くと、羽毛が沢山詰まった真っ白な毛布が、ふわふわと動く。
「んー、誰だ……?」
暗くてよく分からないけど、男の人の声がして、体をまき取られてしまった。私は悲鳴を飲み込み、この状況を打破しようともがく。
「まさか、帽子屋、じゃねぇよな」
「ああああのっ! ご、ごめんなさいっ! 私、部屋を間違えて」
覚醒した頭で考えてみれば、誰もいない布団が温かいなんておかしい。飛び出そうにも抱き締められる力が強まって、どうすることもできないし、狼狽せずにはいられない。
「あの、離してくださーい!」
「……」
「寝ちゃったの? 起きて!」
「アリス?」
「へ?」
腕の力が少し弱まって、優しく包まれるような感じがした。
「懐かしいつーのも、可笑しいな。むしろ、なんつーか……あー、お前本当にアリスか?」
「えっと、アリスです」
とりあえず名乗っておかなくては。ずっとこのままな気がする。
「ククッ、やっぱりな。十四代目のアリス、か。大胆だな。オレは眠りネズミ。よろしくな。アリス」
「だ、抱き締められながら言われても困るよ! けど、よ、よろしくね」
やっとの事で解放され、逃げるようにベッドを降りて部屋の電気をつけた。
「ふぁぁぁあ。眩しーぜ」
ベッドで欠伸をした青年はふわふわしたクリーム色の髪をかくと、私に視線を向けた。
「ククッ。予想通り、ってとこか。会いたかったぜ。桃色のアリス。俺は夢の中で何度もアリスに会ってきたんだぜ、なんてな」
ベッドから手を伸ばした眠りネズミが私の髪に触れた。髪を掬われ、眠りネズミにキスをおとされる。冗談まじりに言われたことよりも、からかわれた方が恥ずかしくて、言葉をかえせない。きっと顔はゆでダコだ。
「ククッ、いじりがいがある。ここに住めよ。俺が可愛がってやるぜ」
「いじりがい? 住めって、そ、それは」
どうしよう。凄く期待した目でこっち見ている。断ったら、後が怖そう。
「それは、なんだ? 不満か?」
心の中で助けを求める。有無を言わせない威圧感に負けてしまいそうだ。
「アリス! 眠りネズミの部屋が開いているから、まさかとは思ったけど」
部屋に入ってきたチェシャ猫の姿に、ほっと息をつく。助かった。
「アリスを離してよ。ドブネズミ」
「チッ」
「大丈夫?」
「うん」
「よぉ。久しぶりじゃねーか、チェシャ猫」
チェシャ猫は怒った表情で眠りネズミを睨む。黙って睨むチェシャ猫と、余裕そうだけど喧嘩を売っている眠りネズミ。もしかしなくても仲が悪いのか、流れている空気が重い。
「こんな猫じゃなくて俺にしろよ、俺がアリスを守ってやるぜ」
眠りネズミの手が伸びる。その瞬間、ぐいっと後ろに肩を引き寄せられた。
「悪いけど、アリスは僕が守るから。君には渡せないよ。行こう。疲れているだろう?」
「今日のとこはひいてやるか。また来いよ」
「う、うん。おやすみなさい。眠りネズミ」
チェシャ猫に肩を抱かれ、部屋を出る。眠りネズミの部屋のドアを閉め、チェシャ猫に手を引かれて廊下を歩いた。チェシャ猫が近くにあった部屋のドアノブに手をかけると、ドアが音を立てて開いた。部屋の中に入り、電気をつける。
「僕は隣の部屋で寝るよ。何かあったら呼んでね」
「うん。あの、チェシャ猫」
「なんだい?」