桃色のアリス ~暗黒の魔女とアリスの想い~
大きな鎌を持った金髪の少女。空色の瞳は憎しみと怒りに震えていた。その視線の先には、真っ黒いドレスを着た一人の女の人がいる。普通に立っていたら地面を引きずる黒い髪が巻きついているせいか、それともこの惨状がそう見せるのか、女の人の纏う雰囲気は闇そのものだった。真っ黒なドレスに、真っ黒な髪。底の見えない真っ黒な瞳。人の心から不安を煽る、飲み込まれそうな黒。嘲笑うように弧を描く唇さえも黒い。
『私達に、この国に!』
少女は空に浮かんでいる女性を威嚇するように叫んでいる。 後ろには倒れている人や怪我を負っている人がいる。彼等は仲間なのか、彼女を、互いを守ろうとしているように見えた。
どういう事……?
あまりにも痛々しい惨状。空は暗雲が立ち込め、地面は所々ひび割れている。これじゃあまるで、世界が崩壊しているよう――
暗黒の女の人は、そんな惨状の中楽しそうに微笑んでいる。
『許さない!』
少女は女の人へと走り、大きな鎌を振りかざした。その瞬間から、何もかもがスローモーションのように動く。暗黒の女の人がこちらを向く。まるで私を見ているように。目が合い、お互い見つめあう形になる。
私を、見ている、の?
身体中に悪寒が走る。
こわい。
『暗黒の魔女ぉぉぉ!』
鎌が近づくにも構わず、暗黒の魔女は私を見つめながらニヤリと笑った。そして、黒い唇が楽しげに言葉を紡ぐ。
「アリス!」
世界がぐらりと周り、お尻に鈍い痛みが走った。
「いたたた」
「アリス、何やってんのさ!」
目の前では夢魔がしゃがみこんで私の肩を掴んでいる。どうやら尻餅を付いたみたいだ。お尻が痛い。
「ぼーっとしたかと思ったら、凄い汗じゃん! 大丈夫なわけ?」
顔を覗きこんで心配そうに見ている。自分の頬に触れると、確かにべっとりと汗をかいていた。
「今、この星の夢を見ていたの」
真っ黒な星を見上げると、星にひびが入った。パァン、と音がして星が粉々に砕け散る。そのまま、何もなかったかのように跡形もなく消えてしまった。
「これは、なんだったの? 夢?」
「アリス、落ち着いて」
体が震える。怖い。目が合った瞬間、身体中に走った悪寒。まるで恐怖を煽るような、とても嫌な感じ。
あれは夢だったの? それとも現実?
「怖い……恐怖でおかしくなりそう」
「アリス?」
不意に後ろから聞こえた声にはっとなる。
「チェシャ、猫?」
「あーやっぱりここにいたか。オイラの思った通りだぜ」
振り向くと、鏡からこちらに入ってくる仕立て屋とチェシャ猫がいた。
「夢魔、久しぶり」
チェシャ猫が夢魔に笑いかける。
「……久しぶり」
「チェ、チェシャ猫」
チェシャ猫はだんだんと近づいて来たかと思うと、私の前に来てニッコリと微笑んだ。屈んだかと思うと、次の瞬間、視界が上昇する。
「急にいなくなるから驚いたよ」
「わわわ! ご、ごめんなさい!」
お姫様抱っこされている。気付いて、全身の体温が上がるのを感じた。
「どうしたの? 凄い汗だけど、熱でもあるの?」
「なななななな! ないででですっ!」
額にチェシャ猫の額が当たり、さっきよりも顔が近い。
「ん? 夢魔。お前何膨れてんだよ。何イライラしてんだ?」
「膨れてないしイライラもしてない!」
少し落ち着いて仕立て屋達の方を見ると、なぜか夢魔が仕立て屋を蹴っている。
「いってぇ!」
「このペアも相変わらずだね」
チェシャ猫が二人を見ながら笑った。
「ってーな。さっきからチェシャ猫といい夢魔といい」
「自業自得だ! バカ」
『私達に、この国に!』
少女は空に浮かんでいる女性を威嚇するように叫んでいる。 後ろには倒れている人や怪我を負っている人がいる。彼等は仲間なのか、彼女を、互いを守ろうとしているように見えた。
どういう事……?
あまりにも痛々しい惨状。空は暗雲が立ち込め、地面は所々ひび割れている。これじゃあまるで、世界が崩壊しているよう――
暗黒の女の人は、そんな惨状の中楽しそうに微笑んでいる。
『許さない!』
少女は女の人へと走り、大きな鎌を振りかざした。その瞬間から、何もかもがスローモーションのように動く。暗黒の女の人がこちらを向く。まるで私を見ているように。目が合い、お互い見つめあう形になる。
私を、見ている、の?
身体中に悪寒が走る。
こわい。
『暗黒の魔女ぉぉぉ!』
鎌が近づくにも構わず、暗黒の魔女は私を見つめながらニヤリと笑った。そして、黒い唇が楽しげに言葉を紡ぐ。
「アリス!」
世界がぐらりと周り、お尻に鈍い痛みが走った。
「いたたた」
「アリス、何やってんのさ!」
目の前では夢魔がしゃがみこんで私の肩を掴んでいる。どうやら尻餅を付いたみたいだ。お尻が痛い。
「ぼーっとしたかと思ったら、凄い汗じゃん! 大丈夫なわけ?」
顔を覗きこんで心配そうに見ている。自分の頬に触れると、確かにべっとりと汗をかいていた。
「今、この星の夢を見ていたの」
真っ黒な星を見上げると、星にひびが入った。パァン、と音がして星が粉々に砕け散る。そのまま、何もなかったかのように跡形もなく消えてしまった。
「これは、なんだったの? 夢?」
「アリス、落ち着いて」
体が震える。怖い。目が合った瞬間、身体中に走った悪寒。まるで恐怖を煽るような、とても嫌な感じ。
あれは夢だったの? それとも現実?
「怖い……恐怖でおかしくなりそう」
「アリス?」
不意に後ろから聞こえた声にはっとなる。
「チェシャ、猫?」
「あーやっぱりここにいたか。オイラの思った通りだぜ」
振り向くと、鏡からこちらに入ってくる仕立て屋とチェシャ猫がいた。
「夢魔、久しぶり」
チェシャ猫が夢魔に笑いかける。
「……久しぶり」
「チェ、チェシャ猫」
チェシャ猫はだんだんと近づいて来たかと思うと、私の前に来てニッコリと微笑んだ。屈んだかと思うと、次の瞬間、視界が上昇する。
「急にいなくなるから驚いたよ」
「わわわ! ご、ごめんなさい!」
お姫様抱っこされている。気付いて、全身の体温が上がるのを感じた。
「どうしたの? 凄い汗だけど、熱でもあるの?」
「なななななな! ないででですっ!」
額にチェシャ猫の額が当たり、さっきよりも顔が近い。
「ん? 夢魔。お前何膨れてんだよ。何イライラしてんだ?」
「膨れてないしイライラもしてない!」
少し落ち着いて仕立て屋達の方を見ると、なぜか夢魔が仕立て屋を蹴っている。
「いってぇ!」
「このペアも相変わらずだね」
チェシャ猫が二人を見ながら笑った。
「ってーな。さっきからチェシャ猫といい夢魔といい」
「自業自得だ! バカ」