桃色のアリス ~暗黒の魔女とアリスの想い~
「危険だって、無理な事だって分かっている。だけどチェシャ猫、私は誰かを犠牲にしたくなんかない。皆が呪いで苦しんでいるのなんて、見たくない!」
いつしかチェシャ猫は言った。
『アリス。僕はアリスのチェシャ猫』
瞳に悲しい色を見せながら。まるで自分に言い聞かせるように。
『僕はアリスの案内人』
「ねぇ。チェシャ猫。チェシャ猫の呪いが何かは分からない。それでも、呪いはきっとチェシャ猫を苦しめている。だから。私、チェシャ猫の呪いも解きたいよ」
チェシャ猫の瞳が不安定に揺れる。その瞳の中には、戸惑いや悲しみが見えた気がした。
「アリス……」
「お姉ちゃん、ぼくたちの呪い、解いてくれるの?」
「え?」
先程ぶつかった幼い少年が、エプロンドレスの裾を引っ張っている。ぼくたちの、ってことは、
「ビル。女の子のスカートは引っ張ってはいけませんよ」
「はーい」
ビルと呼ばれた少年は、白ウサギの言うことを聞き、素直に服を引っ張る手を離した。
「あなたも呪いがかかっているの?」
「うん!」
「あぁ。アリスは呪いに関してよく知らないんですね。全く、チェシャ猫、貴方がいながら何故説明しないんですか」
「そんな暇なかったんだよ」
確かに城を出てから、ウサギを追うのに夢中で色んな話を聞き逃していた。考えれば、疑問は沢山あったのに、肝心なことを聞くのを忘れていた。
「まぁ仕方ありませんね。事は一刻を争いますし」
深くため息をつくと、白ウサギの表情が真剣なものに変わった。
「アリス、貴女には知っていて欲しい事が山程あります。呪いの事も、そして、僕らの事も」
何かが大きく変わる。そんな予感に息を飲む。それは世界か、それとも……
「全てを知り、僕らを、この世界を助けて下さい。それが僕の願いです」
「全てを、知る……」
迷いのない白ウサギの瞳が私を見つめる。
「全てを知って、そしてもう一度、僕らと戦って下さい」
『戦いましょう』
不意に、頭の中で声が響いた気がした。それは、星の中で見た少女の声。
もう一度、戦う。その言葉に、全身の血がざわつくような感覚に襲われる。魔女と戦ったことはない。あるわけが、ない。だけど言い様のない何かに、戦いの記憶が刻まれている気がした。やらなければいけない。ううん。違う。私は白ウサギに言ったの。呪いを解きたいって。それは即ち、魔女と戦うということ。だから答えなんて、最初から決まっている。
「白ウサギ、私、戦うよ。今度こそ戦わせて。呪いを解いて、幸せを取り戻してみせる」
「アリス……ありがとうございます……」
白ウサギが安心した表情を見せる。優しさが溢れるその笑顔は、黒ウサギが谷で見せた笑顔を思わせた。
「ではまず、何から話しましょうか?」
白ウサギが表情一転。嬉しそうな笑みに変え、ニコニコとしながら悩み始める。
「うーん。そうですね。順番に話しましょうか。まずアリスはどうして僕らが呪いを受けたのか、どこまで知っていますか?」
白ウサギは移動し、橋の手すりに腰掛けると、再び私を見つめてきた。
「私が知っているのは、選ばれたアリスの所にはチェシャ猫が来るという事。アリスは世界の崩壊を止める為に白ウサギか黒ウサギ、どちらかの時計を止めるという事。そして魔女のかけた呪いには逆らえない事。それくらいしか……」
自分の無知さに情けなくなって、だんだんと言葉は沈んでいく。
いくらウサギを追うのに夢中になっていたとしても、アリスであるからにはきっともっと沢山把握しておくべきだったのだ。なんて無知なんだろう。
「ごめんなさい」
いつしかチェシャ猫は言った。
『アリス。僕はアリスのチェシャ猫』
瞳に悲しい色を見せながら。まるで自分に言い聞かせるように。
『僕はアリスの案内人』
「ねぇ。チェシャ猫。チェシャ猫の呪いが何かは分からない。それでも、呪いはきっとチェシャ猫を苦しめている。だから。私、チェシャ猫の呪いも解きたいよ」
チェシャ猫の瞳が不安定に揺れる。その瞳の中には、戸惑いや悲しみが見えた気がした。
「アリス……」
「お姉ちゃん、ぼくたちの呪い、解いてくれるの?」
「え?」
先程ぶつかった幼い少年が、エプロンドレスの裾を引っ張っている。ぼくたちの、ってことは、
「ビル。女の子のスカートは引っ張ってはいけませんよ」
「はーい」
ビルと呼ばれた少年は、白ウサギの言うことを聞き、素直に服を引っ張る手を離した。
「あなたも呪いがかかっているの?」
「うん!」
「あぁ。アリスは呪いに関してよく知らないんですね。全く、チェシャ猫、貴方がいながら何故説明しないんですか」
「そんな暇なかったんだよ」
確かに城を出てから、ウサギを追うのに夢中で色んな話を聞き逃していた。考えれば、疑問は沢山あったのに、肝心なことを聞くのを忘れていた。
「まぁ仕方ありませんね。事は一刻を争いますし」
深くため息をつくと、白ウサギの表情が真剣なものに変わった。
「アリス、貴女には知っていて欲しい事が山程あります。呪いの事も、そして、僕らの事も」
何かが大きく変わる。そんな予感に息を飲む。それは世界か、それとも……
「全てを知り、僕らを、この世界を助けて下さい。それが僕の願いです」
「全てを、知る……」
迷いのない白ウサギの瞳が私を見つめる。
「全てを知って、そしてもう一度、僕らと戦って下さい」
『戦いましょう』
不意に、頭の中で声が響いた気がした。それは、星の中で見た少女の声。
もう一度、戦う。その言葉に、全身の血がざわつくような感覚に襲われる。魔女と戦ったことはない。あるわけが、ない。だけど言い様のない何かに、戦いの記憶が刻まれている気がした。やらなければいけない。ううん。違う。私は白ウサギに言ったの。呪いを解きたいって。それは即ち、魔女と戦うということ。だから答えなんて、最初から決まっている。
「白ウサギ、私、戦うよ。今度こそ戦わせて。呪いを解いて、幸せを取り戻してみせる」
「アリス……ありがとうございます……」
白ウサギが安心した表情を見せる。優しさが溢れるその笑顔は、黒ウサギが谷で見せた笑顔を思わせた。
「ではまず、何から話しましょうか?」
白ウサギが表情一転。嬉しそうな笑みに変え、ニコニコとしながら悩み始める。
「うーん。そうですね。順番に話しましょうか。まずアリスはどうして僕らが呪いを受けたのか、どこまで知っていますか?」
白ウサギは移動し、橋の手すりに腰掛けると、再び私を見つめてきた。
「私が知っているのは、選ばれたアリスの所にはチェシャ猫が来るという事。アリスは世界の崩壊を止める為に白ウサギか黒ウサギ、どちらかの時計を止めるという事。そして魔女のかけた呪いには逆らえない事。それくらいしか……」
自分の無知さに情けなくなって、だんだんと言葉は沈んでいく。
いくらウサギを追うのに夢中になっていたとしても、アリスであるからにはきっともっと沢山把握しておくべきだったのだ。なんて無知なんだろう。
「ごめんなさい」