漆黒の花嫁  ーその手をもう一度
***

 ユリアは馬車の窓から外を見た。
 間近にアルジール国の王宮が見えてきていた。
 ユーハイム国の王宮も大きかったが、比べ物にならないほどの威容であった。
 王宮の門の前で馬車が止まると、ユリアは馬車から降りた。

「セルビア、ここまで護衛をしてくれてありがとう」
「とんでもございません」

 ユリアはセルビアを見上げ、言葉にできない感謝を心に染み込ませた。
 
「ここからはひとりで行くわ」
「……承知しました。どうぞお身体にお気をつけください」

 2人が最後の言葉を交わすと、セルビアは深く一礼し、馬車に戻って帰路についた。
 ユリアは御者とセルビアの乗る馬車が見えなくなるまで、その姿を見送った。

 ――ここから先は、誰も守ってはくれない。

 間近にそびえ立つアルジール国の王宮を見上げ、ユリアは小さく息を呑んだ。
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