敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

4 前夜

 数日後。
 エルフナルドは、とある屋敷の一室で辺境伯令嬢のジュリアンヌと会っていた。

「お久しぶりでございます、エルフナルド様。なかなかお呼びくださらないので、私とても寂しくしておりましたわ」
「馬鹿なことを言うな。私が相手をせずとも、お前には相手などいくらでもいるだろう」
「それはそうですけれど……私、あなたとの相性が一番いいの。早く抱いてくださいませ」
「……その前に、今日は話がある」
「話は後でいいわ。とにかく早く。もう我慢できないの」

  その声には、駆け引きも遠慮もなかった。
 ただ欲しいものを欲しいと言う、彼女らしい率直さだけがあった。
 逃げ道を塞ぐように距離を詰められ、エルフナルドは視線を外す。
 その沈黙を合図にしたかのように、ジュリアンヌはためらいもなく歩み寄り、唇を重ねた。
 エルフナルドは一瞬だけ目を伏せ、それを拒むことはしなかった。
 そのまま彼女を抱き寄せ、無言でベッドへと導く。

 ――情事を終えた後、目を覚ましたジュリアンヌが身を起こすと、エルフナルドはすでに身なりを整え、部屋の長椅子に腰掛けていた。

「エルフナルド様、申し訳ありません……そのまま眠ってしまったみたいで」
「構わない。私も少々激しくしすぎた。身体は大丈夫か?」
「ええ……。あんなエルフナルド様、初めてでした。とても良かったですわ」

 満足そうに微笑みながら、ジュリアンヌは裸のまま身体を起こした。

「何か……ございましたか? いつもはお優しいのに、あんなふうに感情的になるなんて」

 エルフナルドはベッドに近付き、自身のガウンをジュリアンヌの肩にかけてから腰を下ろした。

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