漆黒の花嫁 ーその手をもう一度
エルフナルドは再びペンを走らせながら、小さく呟いた。
「しかし、父上も一体何を考えておられるのか……。ユーハイム国の姫を娶れば王の座を譲るなどとは……」
「確かに、その真意は私にも分かりかねます。ただ、この機会を逃せば、第三王子であるフレドリック殿下に好機を与えかねません」
その言葉に、エルフナルドはようやく手を止め、カリルに視線を向けた。
「分かっている……。だから姫を娶ることに決めた」
エルフナルドは一瞬だけ眉をひそめ、すぐに表情を戻した。
「そもそも陛下が、今回の戦に参加されていれば、ここまで戦が長引くことはなかったでしょうに……」
「やめろ、カリル。私が王を志す以上、いつかは戦から退かなければならないことは承知していた」
その言葉は、エルフナルドにとって何度も胸の奥で反芻してきた現実だった。