漆黒の花嫁 ーその手をもう一度
アルジール国の騎士団には、エルフナルドのほかに、サリトスという騎士がいた。
サリトスはエルフナルドに引けを取らぬ実力を持ち、これまで数多の戦争に共に参加し、その功績はいずれも目覚ましいものだった。
だが約半年前から、隣国との情勢を整えるため、サリトスは国を離れている。
騎士団には他にも腕の立つ者はいた。
それでも、全体をまとめ上げ、戦況を掌握できるほどの力量を持つ者がどれほどいるのか――
エルフナルドは、その点を密かに危惧していた。
「父上! 私が団長として率いて、今回の戦、早々に片付けてみせます」
「ならん!!」
エルフナルドの言葉を遮るように、アシュリー王が大声で怒鳴った。
玉座に座るその姿は、もはや父ではなく、王そのものだった。
「次期王が戦の前線に立つなど、あってはならぬ。お前を戦に行かせることはできん。お前が行かずとも、この国が負けることはない」
捲し立てるように言われたエルフナルドは、静かに唇を噛みしめ、やがて静かに頷くしかなかった。
「……かしこまりました、陛下」