漆黒の花嫁 ーその手をもう一度
それから間もなく、アルジール国はユーハイム国へ戦争を仕掛けることとなった。
エルフナルドの危惧していた通り、戦争は予想以上に長期化した。
その間、エルフナルドは何度もアシュリー王の元に訪れ、戦争に参加させてほしいと願い出たが、どれほど戦況が長引こうとも、王が首を縦に振ることはなかった。
そして三年後――
ようやく、アルジール国は勝利を手にする。
ユーハイム国が敗戦を宣言した日の夜。
エルフナルドは、アシュリー王の執務室へ呼び出された。
「お呼びでしょうか、陛下」
エルフナルドは、王の前に跪き、深く頭を下げた。
「エルフナルド、今回の戦が始まる前に、お前を次期王にすると告げたことは覚えておるな?」
「当然でございます、陛下。そのため、私は戦から退き、兄上の執務を引き継いでおりました」
今さら何を、と内心苛立ちながら、エルフナルドはやや強い口調で答えた。
しかし、アシュリー王は気に留める様子もなく静かに続けた。
「お前に王位を譲るにあたり、もう一つ条件がある」
エルフナルドは、頭を下げたまま、視線だけを王へと向けた。
「ユーハイム国の姫を娶れ。それが条件だ」
思わず、エルフナルドは頭を上げた。
「なぜですか! 敗戦国の――」
「質問は受け付けん」
冷たく言い放たれ、エルフナルドは言葉を飲み込む。
「…………かしこまりました、陛下」
再び深く頭を下げたその手は、血が滲むほど固く握りしめられていた。
――これは、王になるための選択だ。
エルフナルドの危惧していた通り、戦争は予想以上に長期化した。
その間、エルフナルドは何度もアシュリー王の元に訪れ、戦争に参加させてほしいと願い出たが、どれほど戦況が長引こうとも、王が首を縦に振ることはなかった。
そして三年後――
ようやく、アルジール国は勝利を手にする。
ユーハイム国が敗戦を宣言した日の夜。
エルフナルドは、アシュリー王の執務室へ呼び出された。
「お呼びでしょうか、陛下」
エルフナルドは、王の前に跪き、深く頭を下げた。
「エルフナルド、今回の戦が始まる前に、お前を次期王にすると告げたことは覚えておるな?」
「当然でございます、陛下。そのため、私は戦から退き、兄上の執務を引き継いでおりました」
今さら何を、と内心苛立ちながら、エルフナルドはやや強い口調で答えた。
しかし、アシュリー王は気に留める様子もなく静かに続けた。
「お前に王位を譲るにあたり、もう一つ条件がある」
エルフナルドは、頭を下げたまま、視線だけを王へと向けた。
「ユーハイム国の姫を娶れ。それが条件だ」
思わず、エルフナルドは頭を上げた。
「なぜですか! 敗戦国の――」
「質問は受け付けん」
冷たく言い放たれ、エルフナルドは言葉を飲み込む。
「…………かしこまりました、陛下」
再び深く頭を下げたその手は、血が滲むほど固く握りしめられていた。
――これは、王になるための選択だ。