敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
ユリアは食事を終えると、夜の身支度を整え、部屋へと案内された。
広く、静まり返った部屋は、昼間の喧騒が嘘のようで、かえって落ち着かなかった。
「こちらで陛下をお待ち下さいませ。明日の朝、またお迎えにあがります」
そう言って部屋を出ようとするアリシアの背中をを、ユリアは思わず引き止めた。
「ま、待って……! これから朝まで、陛下とふたりきりなの?」
自分でも驚くほど、声が上ずっていた。
「アリシアも一緒にいてくれない? 陛下とずっとふたりきりなんて……その、気まずすぎるわ」
「何をおっしゃっているのですか!」
アリシアは驚いた拍子に、思わず声を大きくしてしまい、慌てて口元を押さえた。
「初夜に侍女を側に置くなど、ありえません!」
「……ごめんなさい」
しゅんと肩を落としたまま、ユリアは小さく続けた。
「でも……アリシア。初夜って、何……? 私、何も分からなくて……」
気まずそうにそう告げると、ユリアは視線を床に落とした。
「――初夜とは、夫婦として初めて迎える夜のことです」
一拍置いて、アリシアは慎重に言葉を選んだ。
「目的は……世継ぎをお作りすること、でございます」
「……世継ぎ」
その言葉を繰り返した瞬間、ユリアの顔から血の気が引いた。
アリシアはそれに気づきながらも、王宮の常識として、言葉を止めることはできなかった。
「王妃様として嫁がれた以上、一般的には……世継ぎを産むことが求められます」
「……」
「作法などお分かりにならなくても、陛下にお任せすれば……大丈夫だと、思います」
少しでも安心させようとアリシアは小さく微笑んだ。
「……教えてくれてありがとう」
ユリアも無理に口角を上げ、微笑み返した。
「か、頑張ってみるわ……」
アリシアはその笑顔に不安を残しつつ、静かに部屋を後にした。
ひとり残されたユリアは、部屋の中央に立ったまま、どこに座ればいいのか分からず、立ち尽くしていた。
少し考えた末、テーブル脇の長椅子にそっと腰を下ろした。
エルフナルドを待つ間、アリシアの言葉が何度も頭の中で繰り返された。
――世継ぎを産むことが、王妃の役目……。
けれど
――私に、世継ぎを産むことなんて……できない。
胸の奥が、きゅっと縮む。
ーー私は、子供を作ってはいけない。
広く、静まり返った部屋は、昼間の喧騒が嘘のようで、かえって落ち着かなかった。
「こちらで陛下をお待ち下さいませ。明日の朝、またお迎えにあがります」
そう言って部屋を出ようとするアリシアの背中をを、ユリアは思わず引き止めた。
「ま、待って……! これから朝まで、陛下とふたりきりなの?」
自分でも驚くほど、声が上ずっていた。
「アリシアも一緒にいてくれない? 陛下とずっとふたりきりなんて……その、気まずすぎるわ」
「何をおっしゃっているのですか!」
アリシアは驚いた拍子に、思わず声を大きくしてしまい、慌てて口元を押さえた。
「初夜に侍女を側に置くなど、ありえません!」
「……ごめんなさい」
しゅんと肩を落としたまま、ユリアは小さく続けた。
「でも……アリシア。初夜って、何……? 私、何も分からなくて……」
気まずそうにそう告げると、ユリアは視線を床に落とした。
「――初夜とは、夫婦として初めて迎える夜のことです」
一拍置いて、アリシアは慎重に言葉を選んだ。
「目的は……世継ぎをお作りすること、でございます」
「……世継ぎ」
その言葉を繰り返した瞬間、ユリアの顔から血の気が引いた。
アリシアはそれに気づきながらも、王宮の常識として、言葉を止めることはできなかった。
「王妃様として嫁がれた以上、一般的には……世継ぎを産むことが求められます」
「……」
「作法などお分かりにならなくても、陛下にお任せすれば……大丈夫だと、思います」
少しでも安心させようとアリシアは小さく微笑んだ。
「……教えてくれてありがとう」
ユリアも無理に口角を上げ、微笑み返した。
「か、頑張ってみるわ……」
アリシアはその笑顔に不安を残しつつ、静かに部屋を後にした。
ひとり残されたユリアは、部屋の中央に立ったまま、どこに座ればいいのか分からず、立ち尽くしていた。
少し考えた末、テーブル脇の長椅子にそっと腰を下ろした。
エルフナルドを待つ間、アリシアの言葉が何度も頭の中で繰り返された。
――世継ぎを産むことが、王妃の役目……。
けれど
――私に、世継ぎを産むことなんて……できない。
胸の奥が、きゅっと縮む。
ーー私は、子供を作ってはいけない。