敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

7 結婚した理由

 アルジール国に嫁ぐと決まった時点で、そうなることは分かっていたはずなのに。
 いざ現実を突きつけられると、どうすればいいのか分からなくなる。
 ユリアは思わず、両腕で自分の身体を抱いた。
 冷えるはずのない部屋で、背筋にだけ冷たいものが走る。
 
 重厚な扉の向こうから聞こえる物音に、心臓が小さく跳ねた。

 扉を開く音がして、反射的に顔を上げると、エルフナルドが部屋へ入ってきた。
 その姿を認めた瞬間、ユリアは慌てて立ち上がった。

「ご挨拶が遅くなってしまい、申し訳ございません」

 緊張からか、少し早口になりながら続けた。
 
「私、ユリアと申します。至らぬ点も多いとは思いますが、精一杯精進いたしますので……どうぞ、よろしくお願いいたします」

 しばしの沈黙の後、婚姻の儀で聞いた声よりも、わずかに低いテノールが響いた。

「エルフナルドだ」

 それは名乗りというより、事実を突きつけるような声だった。
 あまりにぶっきらぼうな物言いに、距離を突きつけられた気がして、ユリアは言葉を失う。
 重たい沈黙が、ふたりの間に落ちた。
 その空気に耐えきれず、ユリアは喉を鳴らし、声を絞り出した。

「な、何か……お飲みになりますか? 夜ですし、リラックスできる紅茶など――」
「お前と、よろしくするつもりはない」

 言葉を遮るように、冷たい声が落ちた。

「私は王になるため、致し方なくお前と結婚した。それ以上の関係を築く気はない。父上は世継ぎを期待しているようだが……私は、お前との世継ぎを作るつもりもない」

 淡々と、突き放すように続けた。

「今後、父上に世継ぎのことを問われることがあっても、行為がないことは、決して言うな」

 エルフナルドの一方的な言葉に、ユリアは一瞬、息を詰めた。
 
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