敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
廊下を歩く間、胸の奥に残った違和感を、うまく言葉にできずにいた。
案内の最後に通されたのは、今朝目を覚ました部屋ではなく、その隣の部屋だった。
「こちらが、今後ユリア様がお過ごしになるお部屋でございます」
扉が開かれ、ユリアは思わず室内を見回した。
「とても素敵ね。でも……私には、少し広すぎるくらいだわ」
ユリアは楽しそうに部屋を見回し、ベッドに腰掛けてみた。
「王妃様のお部屋ですから、このくらいは当然でございます。なお、昨日お休みになられたのは、おふたりの寝室でございます。その向こう隣が、陛下のお部屋になります」
「……そうなのね」
昨日の夜のことが脳裏をよぎり、ユリアは無意識に背筋を伸ばした。
あの静かな部屋と、冷たい声が思い出される。
それから、少し声を落として口を開いた。
「……ねえ、アリシア。夜は毎日、昨日のように陛下と一緒に眠るの?」
「いえ。通常は、こちらのお部屋でお過ごしいただきます。陛下からお訪ねがあった時のみ、寝室へ移動していただく形です」
少し言いにくそうに答えるアリシアに対して、ユリアの表情はパッと明るくなった。
「そう! じゃあ……お訪ねがない限り、この部屋でいいのね」
あまりに分かりやすい反応に、アリシアは思わず笑ってしまった。
「安心なさったのが、すぐ分かってしまいました」
「ご、ごめんなさい……。陛下に向かって、訪ねられないほうが安心だなんて、不敬よね……」
しょんぼりせるユリアに、アリシアはやわらかく微笑んだ。
「私の前では大丈夫でございますよ。ですが、陛下の前では……少し取り繕われた方がよろしいかと」
「き、気を付けるわ!」
そう答えながら、ユリアは胸の奥でほっと息をついた。
――少なくとも今は、陛下と距離を保てる。
その事実だけが、彼女の心を支えていた。
案内の最後に通されたのは、今朝目を覚ました部屋ではなく、その隣の部屋だった。
「こちらが、今後ユリア様がお過ごしになるお部屋でございます」
扉が開かれ、ユリアは思わず室内を見回した。
「とても素敵ね。でも……私には、少し広すぎるくらいだわ」
ユリアは楽しそうに部屋を見回し、ベッドに腰掛けてみた。
「王妃様のお部屋ですから、このくらいは当然でございます。なお、昨日お休みになられたのは、おふたりの寝室でございます。その向こう隣が、陛下のお部屋になります」
「……そうなのね」
昨日の夜のことが脳裏をよぎり、ユリアは無意識に背筋を伸ばした。
あの静かな部屋と、冷たい声が思い出される。
それから、少し声を落として口を開いた。
「……ねえ、アリシア。夜は毎日、昨日のように陛下と一緒に眠るの?」
「いえ。通常は、こちらのお部屋でお過ごしいただきます。陛下からお訪ねがあった時のみ、寝室へ移動していただく形です」
少し言いにくそうに答えるアリシアに対して、ユリアの表情はパッと明るくなった。
「そう! じゃあ……お訪ねがない限り、この部屋でいいのね」
あまりに分かりやすい反応に、アリシアは思わず笑ってしまった。
「安心なさったのが、すぐ分かってしまいました」
「ご、ごめんなさい……。陛下に向かって、訪ねられないほうが安心だなんて、不敬よね……」
しょんぼりせるユリアに、アリシアはやわらかく微笑んだ。
「私の前では大丈夫でございますよ。ですが、陛下の前では……少し取り繕われた方がよろしいかと」
「き、気を付けるわ!」
そう答えながら、ユリアは胸の奥でほっと息をついた。
――少なくとも今は、陛下と距離を保てる。
その事実だけが、彼女の心を支えていた。