敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

 ――アルジール国にはかつて、三人の王太子がいた。

 第一王太子のリヒターは、幼少より聡明で、成人後も周囲からの信頼は厚く、王位を継ぐ者として期待されていた。
 第ニ王太子であるエルフナルドは、王太子でありながら、騎士団に所属し、騎士団長を務めるという異例の立場にあった。
 第一王太子のリヒターと第ニ王太子のエルフナルドは、アシュリー王と王妃との間に生まれた子であった。
 王妃はかつて西の国の王女であり、アルジール国との同盟を結ぶためアシュリー王と婚姻を結んだ人物だった。
 しかし王妃は、リヒターが十歳、エルフナルドが四歳の頃に亡くなった。
 一方、第三王太子のフレドリックは、アシュリー王と、かつて踊り子であった妾との間にできた子であった。
 その出自ゆえに、王宮内では疎まれる存在となり、妾であった母もまた、同様の扱いを受けていた。 
 王妃が亡くなった後、フレドリックの母が新たな王妃になるのではないかという噂も立ったが、アシュリー王がフレドリックの母を王妃とする事はなく、新たな王妃を娶ることもなかった。
  
 エルフナルドは、幼い頃から、王に就くのは第一王太子である兄リヒターであり、自分はその側近として、あるいは護衛騎士として国を守るのだと信じて疑わなかった。

 しかし約三年前。
 リヒターは何者かによって暗殺され、命を落とした。

 その犯人がユーハイム国の者ではないかという噂が、密かに囁かれるようになった。
 表向き、ユーハイム国への戦争は資源確保のためとされていたが、実際には兄の死に対する報復として仕掛けられた戦争であった。
 当然、エルフナルドは前線に立ち、戦争に参加するつもりでいた。
 しかしそれを止めたのはアシュリー王だった。
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