漆黒の花嫁  ーその手をもう一度
「でしたら、私も戦に――」
「だめだ!!!!」

 ユリアの言葉を遮るように、ヘレンは声を荒げた。
 張り詰めた空気の中、ふたりはしばらく互いの目を見つめ合っていた。
 ヘレンの視線は揺らぐことなく、強く前を向いている。
 ユリアは、握りしめていた手をそっとほどいた。
 胸の奥に残る悔しさに唇を噛みしめながらも、兄の決意から目を逸らすことなく、静かに一礼する。

 それ以上、言葉を重ねることはなかった。
 

 ヘレンと言葉を交わしたのは、この日が最後となった。
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