結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 カタカタと小さく揺れる馬車の中で、私よりも緊張しているのは父のほうかもしれない。
「お父様……?」
「この人ったら、イレーヌが学園に通うのは嫌だってごねているのよ?」
「えぇっ?」
 それは初耳である。
「学園にはさまざまな人が通うでしょう? もちろん男性も。だから、イレーヌがどこの馬の骨かわからないような男性を好きになって、結婚すると言い出したらどうしようって」
 クスクスと声を押し殺すようにして笑う母は、少女の雰囲気をまとっている。
 だが、私は知っている。父が母と出会ったのも学園で、その後、父のほうから猛烈にアピールして母と婚約したというのを。これは母方の祖母から聞いた話だ。
「お父様、ご安心ください。私だって、自分の身分はわきまえているつもりです。いくらなんでもロイル侯爵家に泥を塗るような、はしたない行いはしませんから」
「違うんだよ……」
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