結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「えぇ、いいわよ? 今?」
「あ、帰るところだったか……」
 悪いことをしたと言わんばかりに、アーヴィンが顔をしかめた。
「図書室に行こうと思っていたから。まだ、時間は大丈夫よ」
 手にしていた鞄を机に戻し、もう一度、椅子に座る。アーヴィンも隣の席から椅子を引っ張ってきて、同じ机に向かって座った。
 彼が机の上に問題用紙を広げたため、私は問題の要点を説明していく。
「イレーヌさん、また明日」
 そんな私たちに声をかけて教室を出ていく級友には「また、明日」と返すが、アーヴィンは軽く手をあげただけだった。すると彼女たちは頬を赤らめ、軽く頭を下げて去っていく。
「君は人気者だな」
「そうかしら? 人気者といえば、で……アーヴィンのほうでは?」
 学園の方針がいくら「平等」といえども、王弟殿下の名前を呼び捨てにするのに抵抗はあった。しかしアーヴィン本人からしつこく、それも三日くらい続けて「俺のことはアーヴィンと呼んでくれと言っただろう? なんなら、愛称のヴィーでもいいが」と言われたら、私だって折れるし、さすがに愛称は……ということで名前呼びに落ち着いたのだ。それだってまだ慣れない。
< 20 / 50 >

この作品をシェア

pagetop