結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 アーヴィンがそんなことを言い出したのは、彼がクラス委員長、私が副委員長に任命されたのがきっかけである。お互いに名前で呼び合い、親しい関係を築きたいとアーヴィンが提案したのだ。どうせなら、仕事のやりやすい環境のほうがいいだろうと。
 彼の意見に反対するわけではないが、それでもアーヴィンは王弟という立場にある。学園に入学したばかりの私にとっては、彼は級友というよりは王弟という印象がまだ強い。
 このクラスでは誰よりもアーヴィンが、学園の方針に馴染んでいるようだった。それでも他の人は恐れ多いからと「アーヴィンさん」と呼んでいるというのに、アーヴィンはそれすら私に許さなかった。
 理由はクラス委員長と副委員長の仲だから。その二人の間に壁ができてしまえば、円滑なクラス運営は行えない。
 そのように力説されてしまえば、拒否するだけの理由が見当たらない。
「そうかな?」
 アーヴィンは苦笑しつつ首を傾げる。
「そうよ。誰にも分け隔てなく接する学園の方針を忠実に守っていらっしゃるでしょう?」
「それでも、俺に気さくに声をかけてくるような生徒はあまりいないけどね」
 おどけて肩をすくめる様子を見れば、彼が本気で悩んでいるとは思えない。やっと他の級友たちと適度な距離感を掴めたとでも、内心ほくそ笑んでいるのだ。
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