結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 一年以上も前の話をよく覚えているものだ。その記憶力のよさには関心してしまう。
「わかったわ。迷惑でなければ、是非一緒に……」
「迷惑なわけあるか。俺が誘ったんだ。詳しい日時は後で連絡する。それよりも、君のお父上にも許可を取らなければ……」
 いつものアーヴィンよりもどこか興奮しているように見え、それがどこかかわいらしいと感じてしまった。
 そんな彼から父宛に手紙が届いたのは、その次の日。学園から帰ると、父が「イレーヌ。これはどういうことだ!」と、アーヴィンからの手紙を握りしめながら、私に詰め寄ってきた。
「まぁまぁ、あなた」
 母は相変わらず優雅に微笑み、父を宥めている。
「アーヴィン……王弟殿下から、国立美術館で開催されるテロス展へのお誘いを受けました」
「あぁ。殿下からの手紙にもそう書いてある。だが、この日は特別招待枠だろう? それにテロス展は、まだ公表されていない。今、美術館がその準備に追われているからな。私たちも議会で聞いたばかりだというのに……」
「では、お断りしたほうがよろしいでしょうか?」
 父はこめかみをヒクヒク動かしながら「断れるわけがないだろう」と絞り出す。
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