結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 そしてアーヴィンが十二歳のとき、父は王位をヴェリオンに譲った。身体の弱かった兄もすっかり健康になり、ここ十年は風邪一つひいていないと笑っていたのは記憶に新しい。
 そうなると今度は、誰もがアーヴィンを王の弟という目で見始め、あわよくば利用してようという思いすら伝わってきた。それに気づかぬふりをして無邪気な態度を取れば、相手も相好を崩してアーヴィンを懐柔しようと腹の中を探り合う。その空気にアーヴィンは辟易していたのだ。
 退位した父は、母と二人で離宮にひきこもった。とはいえ、別に体調が悪いとかそういうわけでもなく、ただ二人で余生を楽しんでいるだけ。特に母は、アーヴィンを授かるまでの心労があったのかもしれない。
 アーヴィンがもっと子どもだったら、一線を退いた両親に甘えられると言って喜んだだろう。だけどそうするには成長しすぎていて、二人の邪魔をしてはならないと、変に気遣ってしまう。
 だからアーヴィンは、同年代の子と同じように学園に通うのが楽しみでもあった。なにより学園の教えは「平等」である。自分をヴェリオンの予備とか王族とか、そんな色眼鏡で見る者たちか解放されると、そう思っていた。
 しかし、そこにある「平等」も完璧ではない。いや、この世に完璧な平等など存在しないのはわかっていたし、世の中が理不尽の塊であるとも理解していたつもりだ。
 それでも新入生代表の挨拶は、実力で手にしたものだと自負している。
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