結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 代表挨拶は、入学試験でトップを取った者がその役目を担うというのは家庭教師からも聞いていたし、十数年前にはその大役を平民が果たしたらしい。
 一方、いくら平等という概念の下であっても、王族とは教師ですら一歩引くような身分であったと、入学してから気がついた。どこかみな、壁をつくってアーヴィンと接するのだ。
 しかしイレーヌ・ロイルだけは他の人と違っていた。
 新入生代表として壇上で挨拶をしたとき、刺さるような視線を感じた。その視線の主を探ってみれば、琥珀色の涼やかな眼差しが、アーヴィンを真っすぐに見つめている。濡羽色の髪は艶やかで、凛としたたたずまいから目が離せない。
 彼女がロイル侯爵令嬢だと知ったのは、彼女の隣に侯爵が座っていたからだ。
 家柄によるクラス分けでは、彼女と同じAクラスになり、クラス委員長と副委員長という関係になった。
 最初はアーヴィンを敬称で呼んでいた彼女だったが、アーヴィンが根気よく、いやしつこいほどに「名前で呼んでくれ」「なんなら愛称でもいい」と言ったところで、イレーヌが折れた。
 そこから彼女との距離は一気に縮まった。
 イレーヌという緩衝材があるから、他の級友ともよい関係が築けたのだと、今になって思う。
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