結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 アーヴィンがシオドアに向かって艶めかしく微笑むと、王族特有の青銀の髪が月光を反射させる。
 久しぶりに彼と会ったが、以前よりも髪が伸びたようで雄々しさに磨きがかかっている。
「あ、ありがとうございます。王弟殿下……」
 シオドアの動揺が伝わってきた。
 私、アーヴィン、シオドアの三人は、同じ教室で勉学に励んだ仲である。といってもアーヴィンとシオドアは本当にそれだけの関係。
「君の妻は、ここにいるイレーヌだと思っていたが?」
 アーヴィンの力強い紫眼がシオドアを射貫く。
「ええ、そうです」
「だが、今は違う女性と一緒にいるね。つまり君は、結婚早々、愛人と逢い引きをしていたと。だからイレーヌにも愛人をすすめたということで、合っているかな?」
 どこから彼は聞いていたのだろう。こんなみじめな姿をアーヴィンには見られたくなかった。
 恥ずかしさで胸が締め付けられたものの、それでもなぜか彼のやわらかな眼差しに心がざわめく。
「そうですね。僕とイレーヌは愛し合って結婚したわけではありませんから。家のために結婚しただけです。お互い愛する人がいるなら、その愛を邪魔しないようにと、そう話し合っていたところです」
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