御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
すぐに渚にその旨を送信したが、既読にならなかった。

(今は仕事中か)

渚は昨日からアルバイトを始めた。

経済的な面で心配はいらないと言ったが、外で働くことで誰かの役に立っていると実感したいそうだ。

そんな彼女の気持ちを尊重して応援すると伝えている。

(仕事に出かけていれば、俺の不在時に母が来ても会うことはないな)

写真フォルダを開いてすみだ水族館で写した渚を眺める。

(可愛いな。今すぐ帰って抱きしめたい)

今朝、玄関で見送ってくれてから三時間も経っていないのに、心がもう渚を求めていた。

母との会話での不快感が、彼女の写真を見ただけで薄れていく。

(さっさと仕事を片づけよう)

早く『おかえりなさい』と言われたい。

一緒に食事をして話をし、ベッドに入って抱き合いたい。

外出するまであと十五分あり、次から次へと上がってくる稟議書を手早く決裁していく。

癒してくれるだけでなく、仕事への活力も与えてくれる渚に深く感謝した。



* * *



七月に入り暑さが厳しくなってきた。

額に浮かんだ汗を拭いた渚は、初めて訪れるマンションの一室のインターホンを押した。

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