御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
「渚のようにはいかないけど、俺もこのくらいは作れるんだ。お腹が空いただろ。一緒に食べよう」

時刻は間もなく十四時で、この時間まで食べずに待っていてくれたようだ。

その優しさに胸が痛い。

いつもなら嬉しいはずなのに、今は空腹のまま待たせてしまった申し訳なさの方を強く感じる。

「渚?」

「あっ、ぼんやりしてすみません。外がすごく暑かったから……すぐに手を洗ってきます」

ダイニングテーブルで彼と向かい合う。

スパゲッティだけでなくサラダとスープも出してくれた。

「おいしいです」と作り笑顔を向けた。

温かい雰囲気を壊したくなくて、今は彼の母親のことを口にできなかった。

食後は話題の映画を一緒に観ようと誘われて、ソファに並んで座る。

ミステリーとラブロマンスが合わさったような人気俳優の邦画だ。

「宏斗さん、あの――」

「今のシーン、怖かった? やめる?」

宏斗がリモコンで一時停止する。

彼の母親のことを相談しようとしたのだが、勘違いされて言い出せなくなる。

「大丈夫です。続きが気になるので最後まで観たいです」

本当は内容なんて少しも頭に入らない。

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