御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
「あの、少し気になっていたことがあるんです。宏斗さんが競泳を辞めたのは、怪我をしたからだと思っていたんですけど、違うんですか?」

唐突な質問に感じたのか、宏斗が軽く首を傾げた。

「そうだよ。大学一年の夏に靭帯を切ってね。手術をしてリハビリしてもレースに復帰できるまで一年半はかかると言われたんだ」

タイムも伸び悩んでいた時期でそんなに長く休めば代表には復帰できないと思い、ここが限界だと判断したそうだ。

「ご両親は競泳の引退についてなにか言われてましたか?」

質問を重ねると宏斗の凛々しい眉根が寄った。

「どうしたの? なにかあった?」

「ち、違うんです。ちょっと思っただけで……。競泳を辞めて会社を継ぐことを目指すようにご両親に言われたのかなって、少しだけ思っていて」

「たしかにその頃、母には辞めるように言われていたよ。父には言われていない。自分の人生は自分で考えろというスタンスの人だから」

(宏斗さんのお母様の話と少し違う。辞めたのは宏斗さんの意思なんだ)

母親の言うなりの人生ではないとわかりホッとしていると、宏斗が声のトーンを少し下げた。

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