御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
(でも、由奈に迷惑をかけたくない)

一泊ならお願いしたいが、元夫が諦めるまでとなるといつまでお世話になればいいのかわからない。金銭的にギリギリの生活なので引越しやビジネスホテル暮らしも不可能だ。

(どうしよう。アパートに帰るしかないのかも。でも、次に捕まったら無理やり婚姻届けにサインさせられそうで怖い)

青ざめる渚を見た宏斗は、行く当てがないのを察したようだ。

後悔がにじむような息をつき、静かな声で話し出す。

「なぜ渚ちゃんともっと関わろうとしなかったのか、過去の自分を殴ってやりたい気分だ」

兄の葬儀で数年ぶりに宏斗に会った。

喪主なので悲しみに暮れている暇もないほど忙しく宏斗とはあまり話せなかったが、紙に書いた連絡先を渡してくれた。

「君には夫がいたし、連絡がないということは幸せに暮らしていて俺の出る幕はないと思っていたんだが、それが間違いだった。すまない。だが、今度こそは。渚ちゃんを俺に守らせてくれ。頼む」

渚をここで見捨てれば亡き友人に顔向けできないと思っているのだろう。

兄との友情のためであっても、頼れる人のいない渚にとってはありがたく心強い申し出だ。

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