御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
「あの、携帯電話の調子が悪いんです。もしかすると宏斗さんの電話に出られない時もあるかもしれません」

『そうなのか。帰国したら携帯ショップに持っていくよ。それまで不便だと思うけど我慢してくれ』

「はい……。宏斗さん」

『なに?』

(黙っていなくなってごめんなさい)

「いえ、その、お仕事、頑張ってください」

『ああ。渚の声を聞けたから、明日はいい仕事ができそうだ』

「おやすみなさい」と言って電話を切った。

二度と会えないと思うと胸が張り裂けそうに痛むが、歯を食いしばって涙をこらえる。

(遠くから、あなたの成功を祈ってます)

守りたいものがあるから、もう泣かないと決めている。

宏斗に借りていた携帯電話を初期化して、別れの手紙と一緒にリビングのテーブルに置いた。

(さぁ、行こう)

後ろ髪を引かれる思いに蓋をして、振り返らずに廊下を進む。

強くならなければと力を込めて玄関ドアを開け、幸せだった彼との生活を終わらせた。

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