御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
母が渚との結婚をすんなりと許すとは思えないからだ。

だからこそ最初に紹介する予定の父には、母にはもうしばらく秘密にしていてくれるように頼んでおいた。

もし父がうっかり話してしまい母が渚について調べたのだとしたら、今回の重大な仕事と結婚を絡めてきたのにも説明がつく気がして眉根を寄せた。

(俺と渚の結婚を阻止するためか?)

宏斗が断れない相手だと思って企んだのかもしれない。

(まさか、渚には接触していないよな?)

タクシー乗り場へ続く出口はすぐそこなのに、嫌な予感がして足を止めた。

けれどもすぐに思い直す。

(考え過ぎだ。想像で焦るのはやめよう。明日、母を問いただせばわかることだ)

自動ドアから外へ出ると、間もなく日没なのに息を止めたくなるほど蒸し暑い。

急いでタクシーに乗り、自宅の住所を告げて息をついた。

(早く渚に会いたい)

母への非難が頭の中に渦巻いていても、渚を想うとフッと気持ちが和らいだ。

出張の間ずっと張っていた気も緩み、後部席に持ち込んだ黒いバッグを撫でた。

中には渚への土産がたくさん入っている。

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