御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
【宏斗さんへ】

渚のきれいな筆跡で書かれた封筒を手に取ると、なぜか嫌な予感がして鼓動が速度を上げていく。

封はされておらず、中から小花柄の便箋を引っ張り出して目を通す。

【これまで大変お世話になりました。宏斗さんとお別れして、これからは自分の力で生きていこうと思います。話し合いもせず出て行くことをどうか許してください】

その理由として、ISSIKI自動車のトップに立とうとしている宏斗には、なにもない自分は相応しくない。妻になれば宏斗の夢を潰してしまいそうで、罪悪感に耐えられないと書かれていた。

【地元ではない都外へ引っ越します。遠くから宏斗さんの成功を祈っています。今まで本当にありがとうございました】

(なんだよ、それ……)

目の前がワントーン暗くなった気がしてソファに腰を落とした。

(幸せそうに笑っていたじゃないか。悩んでいたなら相談してくれよ)

潰れそうな胸の痛みと静かに闘う。

(いや、不安にさせた俺が悪い)

社長になる夢や兄との後継争いまで話してしまったのを後悔した。

(あの話をした時の渚は確かに不安そうな顔をしていたな。ひと月悩んで出した結論なのか)

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