御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
ひと月ほど前の、渚がベッドの上で正座をして待っていた夜を思い出していた。

あの時の会話が原因かと振り返り、ハッと顔を上げた。

(待て。おかしいだろ)

宏斗が夢や後継問題を語る前から渚は緊張した様子だった。

競泳を辞めた経緯を尋ねられ、なぜ今そんな過去の話が気になるのかと不思議に思った。

『宏斗さんが競泳を辞めたのは、怪我をしたからだと思っていたんですけど、違うんですか?』

原因は別にあると誰かに言われたような聞き方だった。

それに気づいて焦りだす。

(他にはなにを話した?)

『競泳を辞めて会社を継ぐことを目指すようにご両親に言われたのかなって――』

(父ではない。渚に余計な話をした犯人は母だ)

頭の中で道筋が繋がった。

宏斗が知らないうちに母が渚に接触し、別れるように説得したに違いない。

後継問題を引っ張り出して、仕事に有益な女性を妻に迎えないと宏斗の夢は断たれるとでも言ったのではないだろうか。

今思えばだが、このひと月ほどの間、渚がなにか言いたそうな顔をすることが多かった気がする。

(どうして俺は積極的に聞き出そうとしなかったんだ)

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