御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
「ありがとう。またなにかあれば頼む」

猿渡に非はないので怒れない。

「母のこのあとのスケジュールは?」

『三十分前に退社した。たぶん真っすぐ帰ったと思うけど。社長は会食だよ』

「わかった」

『行くのか?』

実家に行って母と対決するのかと聞いているのだろう。

「ああ」

『それがいい。あんないい子、他にいないぞ』

「渚を知ってるのか?」

『知らない。名前も今初めて聞いたわ。それでも、ものすごくいい子なのはわかる。お前が満ち足りた顔をしているからな』

つき合いの長い友人には、渚と交際を始めてからの宏斗の変化が見えていたようだ。

『守れるといいな。検討を祈る』と言われて電話が切れた。

(もう遅い。守れなかったんだ……)

それでも母親をこのまま調子に乗らせてはいられない。

込み上げる怒りを堪えて立ち上がった宏斗は、車のキーを掴むと帰宅したばかりの自宅をあとにした。

夜道に車を二十分ほど走らせて実家に着いた。

来客用のパーキングスペースに車を止め、玄関の鍵を開けて入る。

物音に気づいて出てきたのは、四十代の住み込みの家政婦だ。

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