御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
そのような気持ちでいるが、解放という言葉がナイフのように胸に突き刺さった。

逃げるように外へ出て車に乗り込む。

また夜道に車を走らせ自宅に帰ってきたが、まだ刺された胸の痛みは引かなかった。

リビングのソファに座り、渚の手紙を読み返す。

宏斗の夢のために泣く泣く身を引いてくれたのだと受け取ったのだが、宏斗の妻という肩書を重荷に感じていたのだろうかと考えていた。

(捜さない方が、渚のためなのか?)

母に刺された言葉が胸から抜けない。

そこからじわじわと毒素が染み出し、母の思惑通りに進ませようと企んでいるかのようだ。

一睡もできずに夜を明かした。

時刻は七時十分。いつもなら渚が作ってくれた朝食を食べようとしている頃だ。

『おはようございます』という可愛い声と優しい笑顔のない朝は清々しさがなく、空気が淀んでいるように感じた。

出社の支度をしなければと思うが、ソファから立ち上がる気力も湧かない。

渚のぬくもりが残っていないかと彼女が置いていった携帯電話を手に取った。

当然のことながらそれは冷たく、死んでいるかのようだ。

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