御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
ソファから立ち上がった宏斗は着替えるためにリビングを出た。

(必ず取り戻す)

しょげていた気持ちは露ほども残っていない。

全身に力が漲り、不思議な高揚感を味わっていた。



* * *



月日は流れ、十一月下旬。

シンプルな紺色のマタニティワンピースを着た渚は、職場のデスクで電話対応をしている。

「年内はご予約がいっぱいでして、大変申し訳ございません。一月は四日から営業しております」

ここは北海道札幌市にある家事代行業者のオフィスだ。

吉見クリーンサポートの吉見社長の知り合いが社長を務めている会社で、そのつてで契約社員として働かせてもらっている。

吉見社長には本当にお世話になった。

恋人と別れて遠くに引っ越さなければならないことや妊娠を打ち明け、辞めさせてほしいと話すと最初は止められた。

縁もゆかりもない場所で子供を産んで育てるのは大変だと心配してくれたのだ。

渚も不安が大きかったが、東京にいれば宏斗に捜し当てられてしまいそうな気がした。

それに遠くに引っ越せば、宏斗との繋がりが切れたと叔父に思わせることができるだろう。

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