御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
実際に札幌から引っ越したことを伝える手紙を叔父に送ると、『バカ野郎が』と電話がかかってきて以降の連絡はない。

渚を使って宏斗から資金援助を引き出そうという企みは諦めたようでホッとした。

「かしこまりました。では一月六日の十時から九十分でお受けいたします。お電話、誠にありがとうございました」

電話を切った途端にコール音がまた鳴った。

大掃除を考えるこの時期は家事代行業者の繁忙期だ。

受話器を取って、先ほどの客とほぼ同じ会話をする。

宏斗を恋しく思い感傷に浸る暇がないのはありがたいが、妊娠七か月のお腹は大玉の西瓜が入っているかのように張り出して苦しい。

職場の配慮で電話対応と簡単な事務仕事のみなのだが、長時間座っているとつらく感じるようになってきた。

分娩予定日は来年の三月初旬だ。

双子なので産休は今月末から入れるけれど、不安は尽きない。

(産んでからの方が大変なんだよね。きっと)

今は公営の集合住宅に住んでいる。

役所や保健センターに相談して、出産後の公的支援は受けられることになっているが、本当にひとり親でやっていけるだろうかと不安に思わない日はなかった。

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