御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
両親を亡くしたあと、渚にどう話しかけていいのかわからなかったせいだと思うが、友達が急によそよそしい態度になって落ち込んだのを思い出した。

「わかりました。驚いてすみません」

「謝るほどのことじゃない。気楽になんでも相談してほしいと言いたかったんだ。着いたよ」

アパート前の通りは車線のない細道で、長く停車していられない。

早朝なので辺りは静まり返っていて、なるべく音を立てないように車から降りた。

周囲を確認してくれた宏斗が、渚に向けて頷いた。

元夫が潜んでいる気配はないようだ。

急いで自宅に入り、生活に必要なものをバッグや紙袋に詰めて車に運ぶ。

宏斗が手伝ってくれたので十分もかからずに終わった。

「ポストは?」

彼に言われて届いているものは持って行こうと郵便受けを開けると、封書やハガキはなく手帳を破ったような紙が一枚入っていた。

なんだろうと思って手に取り、肩を揺らした。

繁史の角ばった筆跡で【逃がさないからな】と書かれていた。

「きゃっ!」

小さく悲鳴を上げてメモを落とすと、宏斗が慌てて車の方から戻ってきた。

「どうした?」

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