御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
高卒でなんの資格もない自分を雇ってくれたこの店の役に立ちたい。その思いで日々全力で働いている。

「助かるよ。だけど水沢さんだって予定があるだろ。彼氏とデートとかさ」

年頃だからか、地味な容姿の渚でも恋人がいると思われているようだ。

(生活するだけで精一杯。恋なんて考えられないのに)

愛想笑いで受け流そうとしたが、レジ前で売り上げの集計をしている四十代の女性がオーナーに指摘する。

「おっさんが若い子の予定を聞かないの。今の時代、そういうこと言ったらセクハラだよ」

ホールスタッフを束ねている女性でチーフと呼ばれている。オーナーにぞんざいな口を利けるのは夫婦だからだ。

「渚ちゃん、うちのがごめんね」

チーフに両手を合わせて謝られ、渚は拭き終えた椅子を戻しながら首を横に振った。

「大丈夫ですよ。デートする相手はいませんので、シフト調整でお困りの際は声をかけてください。私も働ける時間が増えて嬉しいです」

「ほら、あんたが余計なこと言うから渚ちゃんに気を使わせたじゃない」

「すまん」

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