御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
「あ、あの、私はほんとに大丈夫です。終わりましたのでお先に失礼します。おつかれさまでした」

頭を下げてからスタッフオンリーと書かれたドアに向かうと、後ろにチーフの独り言が聞こえる。

「ほんとにいい子。ずっとうちで働いてほしいわ」

嬉しいけれど恥ずかしくて振り向けず、聞こえなかったふりをしてドアを開けた。

ロッカールームでシンプルな無地のワンピースに着替え、ジップパーカーに袖を通す。

五月半ばの今、日中は心地よい暖かさだが、夜になれば上着が必要な気温にまで下がる。

もう一度、オーナー夫妻に挨拶をしてから店を出て東へと爪先を向けた。

この辺りは商業ビルが建ち並び飲食店も多いが、東へ十分ほど歩けば庶民的な住宅街が広がっている。

逆に西へ少し進めばセレブが住む高級住宅街だ。

大きな通り沿いは明るくこの時間でも賑わっているけれど、横道に入った途端に辺りは暗くなり通行人の姿も見えない。

心細さに自然と速足になり十五分ほど歩くと、住んでいる築四十年ほどの古いアパートの外観がうっすらと見えてきた。

ホッとして歩調を緩めて近づいたその時、アパートの敷地から誰かが出てきた。

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