御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
「大丈夫です。すみません」

「病院に行くほどではなさそうだ。もう少し冷やしてから薬を塗ろう」

「あの、ほんとにもう大丈夫ですので。薬より夕食を作らないと。お腹空いてますよね。遅くてすみません。私、なにをしてもダメで……すみません」

(役立たずで迷惑をかけてばかり。もう消えてしまいたい)

流水の下から手を引っ込めると、宏斗に顔を覗き込まれた。

潤んだ目を見られたくなくて顔をうつむける。

「なにがあった? またあの男が接触してきたのか?」

「宏斗さん――」

困り果てているが、これ以上宏斗を煩わせたくない。

助けてほしいと喉から出かかった言葉を飲み込む。

言いたくても口にできずに葛藤している間、宏斗の名前をただ繰り返して呼んでいた。

彼は静かに続きの言葉を待ってくれている。

見つめてくる頼もしい瞳が、君の力になりたいと訴えかけているような気がして心が揺さぶられた。

彼の名前を七回呼んでついに涙腺が決壊し、涙にむせびながら声を絞り出す。

「助けてください……」

「そう言ってくれるのを待っていた。ありがとう。俺に任せて」

「あっ」

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