御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
正面から抱きしめられて目を丸くした。

兄は両親を亡くした高校生の時に競泳を辞めざるを得なかったが、宏斗もその後数年して大学生の時に怪我が原因で競技から引退したそうだ。

それでも今も体つきはアスリートのようにたくましい。

守られているのを実感してホッとするどころか、鼓動はどんどん速度を上げて顔は火を噴きそうに熱くなる。

(ど、どうしよう。気持ちが憧れを越えてしまいそうで、困る)

渚がなにを思うのかは、宏斗は感づいていないようだ。

「落ち着いた?」

しばらくして体を離した彼は、兄のような眼差しで優しく微笑みかけてくれる。

軽い火傷は薬を塗ってもらい、痛みは気にならない程度だ。

彼に手伝ってもらって急いで夕食を作り終え、ダイニングテーブルに運んで向かい合う。

食べながら、今日のレバロでの一件を打ち明けた。

「アルバイトなら新しい職場がすぐに見つかると思うんです。でも、また同じことになってお店に迷惑をかけると思うと怖くて……」

どこまでも繁史に追いかけてこられそうな気がして眉尻を下げた。

宏斗はフォークに刺したチキンを睨み、なにかを考えているような雰囲気だ。

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