御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
繁史の迷惑行為の件で勤務先に連絡するつもりはない。

彼のためではなく、公私混同は己のポリシーに反するからだ。

こちらの肩書を彼に明かす気もないが、説得しても渚を諦めないようなら名刺を渡すしか方法がないかもしれない。

宏斗が何者かを知れば彼がどう思うのかは想像できた。

(渚を追い続ける方がデメリットが大きいと思うだろう)

一緒に暮らす中で彼女はよく微笑んでくれるけれど、常に不安を抱えているせいかぎこちなく感じる。

早く心からの笑顔が見たいと思っていると、ドアがノックされた。

「どうぞ」

「失礼いたします」

入ってきたのは担当秘書を務める四十歳の男性で、秘書室長でもある。

この執務室は奥の窓際にL字の執務机を置いていて、ドア近くの左側には八人掛けのミーティングテーブル、右側には応接セットがある。

細身で眼鏡をかけた秘書が執務机の前まで来て一礼した。

「本日のスケジュールのご確認をお願いします」

「ああ」

いつもこの時間から一日のスケジュールをふたりで確認している。

事務的なやり取りをしていると固定電話が鳴ったので、そのまま秘書を待たせて受話器を取った。

< 40 / 222 >

この作品をシェア

pagetop