御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
グレーのスーツに真面目なビジネスヘア、細身の高身長で頭は切れるが、からかい癖があるのは難点だ。

「まぁな。一緒に暮らしてる」

(正確には偽装結婚の関係だが)

「へぇ。仕事人間のお前が女と一緒に暮らすとは驚きだ」

社内で宏斗に軽口を叩く部下は猿渡だけだ。

もちろん人前では言動に気をつけてくれているが、こうしてたまに雑談しにやってくる。

「このあと外出する。五分しか話せないぞ」

「足りる。お前の母親が次の見合い相手を見つけたという報告だけだから」

宏斗の母親は当社の副社長を務めており、猿渡はその担当秘書である。

その関係性に最初は抵抗感を覚えた。宏斗について話題に出されそうな気がしたからだ。

けれどもこうして母親の動向を知らせてくれるので、メリットの方が大きいと今は思っている。

「またか」

うんざりしすぎてため息もでない。

三十歳を過ぎてからやたらと見合い話を持ってこられる。

それもビジネス相手や政治家、官僚の身内ばかりなので断るのが大変だ。

もちろんやめてくれとはっきり伝えているが、母親は昔から息子を意のままに操れる存在だと捉えているので効果はない。

< 49 / 222 >

この作品をシェア

pagetop