御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
渚を守ろうとしての契約なのに、新たに敵を作れば本末転倒である。

「なぜ?」

「五分経った。すまない、また今度話そう」

猿渡が出ていき、入れ違いに担当秘書が声をかけに来た。

「専務、お時間です。お車は正面玄関前に用意してあります」

「ああ。すぐに行く」

午後一番の仕事はこの春、新しく取引を始めた企業の訪問だ。

見合いの回避にすぐに動き出したいところだが、仕事は待ってくれない。

(渚ちゃんの手作り弁当で癒された気分が台無しだ)

母の横暴な振る舞いに奥歯を噛みつつ、鞄を手に急いで執務室を出た。



午後も奔走し、帰宅したのは二十時半だった。いつもより一時間ほど遅い。

玄関で靴を脱いでいると、リビングからエプロン姿の渚が小走りに出てくる。

「宏斗さん、おかえりなさい」

「ただいま。なにかあったのか?」

急いでいる様子だったので繁史がまた接触してきたのではないかと眉根を寄せたが、渚はキョトンとしている。

「あっ、なにもないです。早くおかえりなさいって言いたかっただけで……ごめんなさい」

(俺の帰宅を待ちわびていたから?)

可愛い理由に宏斗の胸が高鳴る。

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